榊原記念病院が取り組む "遠隔心臓リハビリテーション" が、令和6年度「STI for SDGs」アワードにおいて文部科学大臣賞を受賞した。
榊原記念病院は、仕事や移動の制約などで通院が困難な状況にある人々に心臓リハビリテーションを提供することを目的に、遠隔でのリハビリテーションを実現するアプリケーション「TeleRehab(テレリハブ)」を開発した。
「TeleRehab」は、Apple Watchなどのウェアラブルデバイスを用いて患者の生体情報等を病院に転送するシステムとして設計。年齢、性別、仕事や経済状況にかかわらず、遠隔で心臓リハビリテーションに誰でも参加できる環境の構築に取り組んだ。
同システムは、実際の外来心臓リハビリテーションのプログラムになるべく近づくように開発された。医療機関側は、転送された患者生体情報をもとにした看護師による生活指導だけでなく、管理栄養士による栄養指導、公認心理師によるカウンセリング、さらには仕事復帰をサポートする両立支援が多職種連携で行われている。
STI for SDGs アワードは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主催し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する取り組みを表彰。今回、榊原記念病院の取り組みは、通院が難しい患者への支援を実現した点に加え、医療従事者に多様な働き方の選択肢を提供した点が評価され、文部科学大臣賞を受賞した。
TeleRehabを用いた遠隔リハビリテーションの実施により、患者側は距離や時間の制約の軽減、移動コストの削減などにより、心臓リハビリテーションに参加しやすくなる。
医療従事者側にとっても、在宅勤務などの選択肢が広がり、長時間労働や女性医療従事者の離職防止など働き方改革につながるというメリットがあるとしている。
現在は、未病の健康管理のためのフィットネスクラブや自治体などとの連携を進められており、島しょ部を始めとした地方への展開も目指すとしている。
<受賞理由>本取り組みは、医師を始めとした多職種の医療従事者により作り出された、病気の再発防止や患者の健康寿命改善を目的とした医療介入の新しい形である。地域格差や時間的な制約、経済事情、性別などの個々の事情により、心リハを受けたくとも受けられないといった不平等の解消を目指す素晴らしい取り組みである。
遠隔でのリハビリテーションの実現は、患者側はさまざまな制約が解消され負担も減ることにより受診しやすくなり、医療従事者にも、長時間労働や女性医療従事者の離職などの課題解決につながるというメリットがある。現在、島しょ部を始めとした地方への展開や、未病の健康管理のためのフィットネスクラブや自治体などとの連携も進められており、展開性の面でも大きな期待が持てる。
「誰ひとり取り残されない」医療の提供手段の1つとして、SDGs目標3のほか、1、4、5、8達成への大きな貢献につながるとともに、他の目標達成を著しく損なうことのない活動として、選考委員会において文部科学大臣賞にふさわしいと判断された。
引用・参考
◾️多職種からの情報発信(榊原記念病院HP)
https://heart-rehab.jp/informations/43/
◾️令和6年度「STI for SDGs」アワード 受賞取り組みの決定について(JST)
https://www.jst.go.jp/pr/info/info1724/pdf/info1724.pdf