10月30日、「日本健康会議2024」が開催し、「健康づくりに取り組む5つの実行宣言2025」に関する達成状況などが報告された。経済産業省の講演では、健康経営の目指す姿として「生産性損失対策」に理学療法士が記載された。
「日本健康会議」は、日本における健康寿命の延伸と医療費の適正化について、民間組織が連携し行政の全面的な支援のもと実効的な活動を行うために組織された活動体。各地で職域、地域の創意工夫を生かしながら「健康づくりに取り組む5つの実行宣言2025」を達成し、誰もが活躍できる社会を実現していくことを目的に活動している。
今回、「日本健康会議2024」では各宣言の達成状況の報告のほか、「健康でいられる地域・まちづくり」や「健康保険組合等加入者の予防・健康づくり功績者」についても表彰された。当日の動画や講演資料は、日本健康会議の公式ホームページで閲覧が可能となっている。
健康経営の取り組み推進、「宣言3」の達成率80.5%
宣言3に掲げている「保険者とともに健康経営に取り組む企業等を15万社以上とする」については、達成した法人数の合計が12万社を超え、2024年の達成率は80.5%であることが報告された。
宣言3の達成要件は、大規模法人・中小規模法人ともに「健康経営優良法人の認定基準を満たすこと」とされている。
取り組みの具体例としては、「事業主健診の結果を保険者と共有して働く人の健康づくりを進めるなど『コラボヘルス』にも積極的に取り組むこと」や、「健康上のアウトカムに加えて、アブセンティーイズムやワークエンゲージメントなどの把握を進めること」などが示されている。
同会議では、全国健康保険協会と健康保険組合連合会が、それぞれの立場から取り組み状況について事例を交えながら報告。事業所カルテの作成や健康スコアリングレポートの活用など、「宣言3」に関連する施策の実施状況とその成果について紹介された。
健康でいられる地域・まちづくり表彰
最優秀賞「八王子てくてくポイント事業」
「健康でいられる地域・まちづくり表彰」では、東京都八王子市の「八王子てくてくポイント事業」が官民連携分野で最優秀賞を受賞した。
表彰自治体として事業概要を発表した植原氏(八王子市副市長)は、「ICTを活用した健康習慣づくりを通じて高齢者のセルフマネジメントの支援を実施すると同時に、事業を持続的に発展させるために広告収入等で運営コストを賄うことを目指した」と取り組みの背景を紹介した。
同事業は、スマートフォンアプリを活用し「運動・栄養・社会参加」の3つをバランスよく促すため、歩く、食べる、脳トレやボランティア・イベント参加など、活動を実施した分だけ介護予防ポイント「てくポ」として貯まる仕組み。
貯まったポイントは「てくポ」利用店で活用したりPayPayポイントへの変更が可能となっており、ポイント付与・管理はICTを活用して業務を自動化するなどマンパワーをかけない事業運営の工夫を実施したことが紹介された。
植原氏は「令和3年におけるアプリ登録者は352名だったが、令和6年9月末時点では9,634名と大幅に増加した。歩行速度向上、脳トレ成績の好転、生活意欲の向上などの結果も出ている。地域とつながりながら高齢者のニーズに合ったサービスを提供する、“高齢者・企業・行政の三方よしの関係” こそが、高齢化が進む中で持続可能な地域をつくっていくための鍵である」と伝えた。
■「健康でいられる地域・まちづくり表彰」最優秀賞 八王子市 事業概要発表
優秀賞「健幸いきいきプロジェクト」
水害常襲地域である京都府福知山市が「介護予防は究極の防災対策である」という考えのもと、災害リスクが高い地域でスポーツ連携介護予防教室を実施した取り組み「健幸いきいきプロジェクト」が表彰された。
「健幸いきいきプロジェクト」では、参加者の減少や固定化といった課題に対して、データに基づき会場を定期的に変更や、市が通いの場を開拓して住民主体で継続できるよう市と社会福祉協議会がサポートするなどの工夫を実施。その結果、コロナ禍と比較して参加者数は3.6倍に増加したことが報告された。
日本健康会議のホームページには、「健康でいられる地域・まちづくり表彰」の各取組みについて、概要や資料が掲載されている。
健康経営の目指す姿 「生産性損失対策」に理学療法士
経済産業省の商務・サービス審議官である南氏は、「健康経営の足跡と今後の目指すべき姿」と題した講演のなかで「2020年から2050年にかけて総人口は20%減少し、生産年齢人口は約30%減少する見込みのなか、個人の生活や経済、社会を豊かにするヘルスケア産業が非常に重要な意味を持つ」と重要性を指摘した。
そのような背景の中、経済産業省としては「健康経営が日本経済社会を支える基盤となるように、①健康経営の可視化と質向上、②新たなマーケットの創出、③健康経営の社会への浸透・定着の3本柱に沿って、引き続き力強く進めていく」とビジョンを紹介。新たなマーケットの創出においては、関連サービスの分類イメージにて「生産性損失対策」に理学療法士が記載された。
健康経営は健康上のアウトカムだけでなく、経営・マネジメントにも影響するとされている。経済産業省の示す「健康経営の目指すべき姿」のなかで、新たなマーケットの創出として「生産性損失対策」に理学療法士が記載されたことは注目される。
■講演動画:「健康経営の足跡と今後の目指すべき姿」(経済産業省 南 亮 氏)
引用・参考
■ 「日本健康会議2024」動画議事録/講演資料(日本健康会議HP)
■ 日本健康会議データポータル
健康づくりに取り組む5つの実行宣言 2024年宣言達成状況