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2024.12.02

立って移動できる車椅子「Qolo」筑波大発ベンチャー開発



筑波大学発のベンチャー企業であるQolo株式会社は、“立って動けるモビリティ機器”「Qolo(コロ)」の実用化に向けて筑波大学附属病院リハビリテーション部の協力を得ながら筑波大学と共同開発に取り組んでいる。

Qoloは立った姿勢で移動することや、高いところへ手を伸ばすことを可能としており、車椅子ユーザーの「やりたい」を「できる」にすることを目指している。

さらに、立ったままに移動できる車いすタイプに加えて、その場で座ったり、立ったりを繰り返し訓練できるリハビリテーション向けのタイプを開発しており、理学療法士の訓練負担の削減にも貢献が期待されている。



ー 立って動けるモビリティ機器「Qolo」開発の背景

同社代表の江口さんは、人が立ち上がる動きを助ける機能を持ったパーソナルモビリティ(ひとり乗りの個人用移動機器)を大学の卒業研究テーマとした。江口さんは、自宅で転倒した祖母が大腿骨を骨折し、立ち上がることや歩くことがままならなくなったことで、その生活に大きな影響があったことを目の当たりにしたことが動機のひとつであったと話す。

江口さんは幼い頃から乗り物が好きで、自動車のエンジニアを目指していたため、立ち上がった後に動くことができる点にこだわりを持ち、当初は筑波大学の工学系領域で取り組みを進めた。しかし、車いすユーザーに試してもらうと思ったように立ち上がることができず苦労もあったと語る。

その後、筑波大学の医学系領域と連携し、車いすユーザーだけでなく医療専門職からも幅広く意見をもらいながら研究を進め、製品化するために同社を設立した。

乗り物の研究から始まったプロジェクトは、車いすユーザーや医療専門職からの声に応える形で起立訓練向けの機器開発にもつながった。現在は、病院での起立訓練を支える「リハビリテーションモデル」と、日常生活で立って動ける「モビリティモデル」の実用化に取り組んでいる。




ー 車椅子生活の課題

Qolo株式会社は車椅子生活の課題を大きく3つあげている。

①健康面の維持:床ずれを防ぎたい、骨や関節の調子を維持したい
②機能面の向上:高いところへ手を伸ばしたい
③尊厳の維持向上:相手と目線を合わせたい

さらに、車椅子利用者が社会に復帰した際に、これまで出来ていたことができなくなるというケースがある。Qoloは通常の電動車椅子の状態から身体でバランスをとって、立位姿勢で移動できる状態へ移行できる仕様となっている。

1台で両方の機能を簡単に切り替えられることで、障がい者自身の「自分で出来ること」を拡大し、障がい者雇用の可能性の拡大にも繋がっていると話す。


ー 「モビリティモデル」の特徴

「モビリティモデル」は、既存の電動車椅子と比較すると小回りがきき、狭い場所での旋回を可能としている。対象者は「立位姿勢になった際に体幹姿勢を維持できる」などが条件にあり、条件をクリアしていれば健常者が立ち上がる時間と同等な時間で「すばやく立ち上がり動作」ができることがメリットとなっている。

開発者である江口さんは、教師や美容師など立ったまま仕事をする職種や、子育て世代においては入学式など周りと合わせて起立することができるなど、生活における様々なシーンを想定して開発を進めているという。

Qoloは2024年から実証領域を拡大し、2026年の製品化を目指している。

これまでも車椅子ユーザーに立って移動できるとしたら「やりたい」ことをヒアリングし、イメージ映像にしたものがyoutubeにて公開されている。




ー 「リハビリテーションモデル」の特徴

Qoloモビリティモデルの開発過程において、車いすユーザーや医療現場の声を受けて開発をスタートさせたのが立ち上がり訓練機の「リハビリテーションモデル」。理学療法士による起立リハビリテーション訓練においては、理学療法士の身体的負担や、安全性、術後早期から実施したくても大きな機械は訓練室でしか使用できないなどの問題があったと同社の担当者は話す。

それらを考慮して開発されたのが「リハビリテーションモデル」のQoloであり、同モデルはどこでも起立訓練が「繰り返しできる」ことが特徴となっている。

「リハビリテーションモデル」のQoloを利用した場合、患者は、理学療法士の補助を受けながら、立ち上がり訓練をほぼ自立した状態で実施できる。

さらに、「リハビリテーションモデル」にはセンサーが搭載されており、起立回数や起立にかかった時間、それらを分析した結果などがデータとして可視化できるようになっている。

「リハビリテーションモデル」は2024年1月からサンプル提供を開始し、2025年には製品化を目指すとしている。



【江口さんよりコメント】

ひとりでも多くの人に立ち上がって生活する自由を届けることを目標に掲げ、共感して頂いた車いすユーザーの皆さん、リハビリテーションの現場で働く多くの方々からご協力を頂き開発を進めて参りました。

もう一度立ち上がり、生活へ還っていくためのリハビリテーションを、立った姿勢での移動で「したい」が「できる」へ変わっていく日常を届けるために引き続き製品化へ取り組んで参ります。

ご関心をお持ち頂けましたら、ぜひ試用などご相談ください。


お問い合わせ先:
(リハビリテーションモデル)rcr@qolo.jp
(モビリティモデル)mcr@qolo.jp

引用・参考
1)立ち乗り車いすで生活楽に 筑波大発ベンチャー開発(共同通信)
2)「立って暮らせる車いす 開発と社会実装に挑む!」 ~筑波大発ベンチャー江口社長、清水医師 Lucky FM茨城放送にナマ出演~(6月22日)(筑波大学HP)
3)立ち上がるを支援する新しい車椅子Qolo!開発者と考える立位の重要性(ユニバーサルトレーニングセンターHP)
4)立つ姿勢で「したい」を「できる」に 実用化目前“次世代の車いす”の可能性【サンデーLIVE!!】(2024年6月30日)(ANNnewsCH YouTube)

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