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2024.11.29

産業保健・健康経営分野でリハビリテーションの経験を生かす



【はじめに】

厚生労働省の理学療法士・作業療法士需給分科会において、2019年時点でのPT・OTの供給数は需要数を上回っており、2040年には1.5倍になると推計されています1)

セラピストの所属先は、PTが医療施設78%、介護サービス施設15%2)、OTが医療関連72%、介護関連20%3)となっており、医療、介護施設が大部分を占めていますが、医療保険・介護保険下で働き続けることに、給与面や体力面の不安を抱えているセラピストは少なくありません。

そこで最近着目されているのが、予防・保険外領域としての『産業保健・健康経営分野』です。医療や介護施設でリハビリテーション(以下「リハビリ」という)の経験を積んだセラピストが、この分野でどのような貢献ができるか一緒に考えてみましょう。


【産業保健・健康経営分野の課題】

我が国では、労働人口の減少や高年齢労働者の増加といった社会課題があり、労働災害の増加や労働生産性の低下などが危惧されています。

第14次労働災害防止計画の重点対策において、労働者(中高年齢の女性を中心に)の作業行動に起因する労働災害防止対策の推進、高年齢労働者の労働災害防止対策の推進が掲げられており、転倒予防や腰痛などの筋骨格系障害に対する取り組みが求められています。

また、労働生産性の視点では、体調不良による欠勤や医療・薬剤費よりもプレゼンティーズム(出勤はしているものの健康上の問題によって完全な業務パフォーマンスが出せない状況)による損失が大きいことが示唆されています。症状別では肩こりや腰痛といった筋骨格系障害や睡眠障害、ドライアイ、メンタルヘルス疾患の割合が大きいことが分かっています4)

これらの産業保健・健康経営分野の課題に対して、痛みや転倒、筋骨格系、メンタルヘルスなど様々な知識と経験を有し、医療、介護施設で多くの方々へリハビリを提供しているセラピストが貢献していく必要があります。


【リハビリと産業保健・健康経営分野の役割の違い】

セラピストとして産業保健・健康経営分野で貢献していく為に、重要になってくるのは、リハビリとの役割の違いです。

リハビリは病気や怪我をして日常生活に支障をきたした患者に対してサービスを提供しますが、産業保健・健康経営分野では、腰痛や転倒といった労働災害や筋骨格系障害、メンタルヘルス不調による労働生産性低下を予防、改善する企業へサービスを提供することになります。

例えば、腰痛の従業員にアプローチする時の事を考えてみましょう。リハビリの場合は、まず痛みを軽減させることを考えます。どのような要因で痛みがでているのかを評価して、それに基づいて治療を行い、痛みの軽減を図って、生活の質を向上させることが価値になります。

一方で産業保健・健康経営分野では、腰痛による労働災害が起こる可能性はないか、業務パフォーマンスが低下していないか、ということを考えます。作業環境や動作方法を改善したり、腰痛に対するリテラシーを高めてセルフケアをすることで、従業員の労働災害の予防や、業務パフォーマンスを向上させることが価値になります。

セラピストは企業が抱える課題を把握し、何が求められているかを理解した上で、専門性を生かし、貢献していくことが重要になります。


【産業保健・健康経営分野で貢献する為に必要なこと】

これまで述べてきたように、リハビリで経験を積んだセラピストが、産業保健・健康経営分野で活躍していく可能性は大きいと感じます。

一方で、多職種で連携するにあたり、この分野の知識を習得しているセラピストが十分とは言えないのが現状です。

産業医を対象とした調査5)では、 理学療法士が産業保健チームの一員として産業保健活動をおこなう上で、「産業保健・産業衛生の理解」や「産業保健職の役割や業務の理解、連携や協働する能力」が求められていることが分かっています。

セラピストが多職種と連携して、産業保健・健康経営分野で貢献して行く為には、その知識を習得していなければなりません。



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【参考文献】
(1)厚生労働省.第3回理学療法士・作業療法士需給分科会.理学療法士・作業療法士の需給推計について 2019.4.5
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000499144.pdf

(2)日本理学療法士協会 統計情報 会員の分布
https://www.japanpt.or.jp/activity/data/

(3)日本作業療法士協会誌 第127号 ISSN 2187-0209 2022.10.15
https://www.jaot.or.jp/files/page/kankobutsu/pdf/ot-news2022/2022-10.pdf

(4)Nagata T, Mori K, Ohtani M, et al. Total Health-Related Costs Due to Absenteeism, Presenteeism, and Medical and Pharmaceutical Expenses in Japanese Employers. J Occup Environ Med. 2018;60(5):e273-e280. doi:10.1097/JOM.0000000000001291
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29394196/

(5)日本理学療法士協会.産業保健・健康経営における課題と理学療法士活躍の可能性に関する調査事業報告書 2024.3.31
https://www.japanpt.or.jp/activity/asset/pdf/20240331_chousajigyou_houkokusho.pdf

この記事を書いた人

株式会社バックテック

肩こり・腰痛対策支援サービス ”ポケットセラピスト” を運営。
「全人類が健康に活き活きと暮らし、社会に貢献できる世界をつくる」をミッションに、慢性痛に悩む労働者を医療職がオンライン上でマンツーマンサポートしていくサービスを提供しています。ポケットセラピストにご興味がある方は、是非お気軽にお問い合わせください。

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