近年、リハビリテーションの分野では、訓練をゲーム化することで患者の主体性を引き出す「ゲーミフィケーション」への注目が高まっている。
実際、訓練の現場でゲーミフィケーションを取り入れることは、セラピストの経験則から一定の効果が期待されるが、その有効性はどうなのだろうか。
ゲーミフィケーションとは?
ゲーミフィケーションとは、ゲームの要素や仕組みをゲーム以外の分野や活動に取り入れることで、人々の関与やモチベーションを高める手法である。この概念は、教育、ビジネス、健康管理、マーケティング、社会活動など、さまざまな分野で活用されている。
単にゲーム化するだけでは、利用者との関係性が築けずに効果を持続させることはできない。そのため、ゲーミフィケーションには考慮しなくてはならない要素が6つあるとされている。この6要素を取り入れることで、対象者の学習に対するモチベーションを高めることができるとされている。
<ゲーミフィケーション6要素>1. 能動的な参加
自分が行いたい時に始められて、やめられる。適切な難易度を設定する。
2. 達成可能な目標設定
努力をすることでゲームクリアが可能である。
3. 独自性の歓迎
ルールを逸脱してもゴールに辿り着ける工夫を設定する。
4. 即時のフィードバック設計
ゲームでは、ボタンを押すと主人公がジャンプするなど即時のフィードバックがゲームに引き込ませる。
5. 称賛を演出
自分の成功がきちんと認められるということがやる気を生み出す。
6. 成長の可視化
レベルアップが目に見えてわかる工夫が必要。
リハビリテーションにおけるゲーミフィケーションの効果と事例
リハビリテーションにおいては、ゲーミフィケーションを活用されている事例が近年増えてきている。pubmedでゲーミフィケーションと理学療法などを調べると、2017年ごろから学術論文が増え始めていることがわかる。
神経運動障害を有する小児においては、11件の臨床試験をまとめたシステマティックレビューによると、ゲーミフィケーションが患者のやる気を引き出し、治療を続けやすくしたと示されている。
また、成人におけるゲーミフィケーションと身体活動の関連をみた研究では、ゲーミフィケーションを実施した群の方が身体活動を促進するのに有効であることが示唆されている。また、糖尿病などの慢性疾患を有する者においても、有効であったとしている。
このように、ゲーミフィケーションは患者のやる気やモチベーションを引き出し、運動を促進する効果があるといわれている。
今後、リハビリテーション分野において、ビデオゲームの利用・競争の導入など「ゲーミフィケーション」の様々な技法がどの程度有効であるか、行動学的手法を用いて科学的に検証されることが期待される。
「ゲーミフィケーションとリハビリテーションの親和性」研修会を開催
ゲーミフィケーションは、リハビリテーションの現場に新しい可能性をもたらす手法である。その仕組みや効果を正しく理解し、実践に取り入れることで、患者のモチベーションを高め、治療の質を向上させることが期待できる。
日本リハビリテーション医療デジタルトランスフォーメーション学会は、「ゲーミフィケーションとリハビリテーションの親和性」をテーマに研修会を開催する。
ゲーミフィケーションを活用するための知識やアイデアを学び、リハビリテーションの新たな可能性を探求してみてはいかがだろうか。
<研修会の概要>
【主催】
日本リハビリテーション医療デジタルトランスフォーメーション学会
【テーマ】
ゲーミフィケーションとリハビリテーションの親和性
【会期】
2024年12月02日(月)18:30~20:00
(申込締切:2024年11月29日)
【会場】
Zoomウェビナーによるウェブ研修会
【参加費】
会 員:無料
非会員:2,500円
【申し込み締切】
11/29
引用・参考
◾️ゲーミフィケーション6要素 (日本ゲーミフィケーション学会)
https://www.jgamifa.jp/6elements
◾️リハビリテーションのゲーミフィケーション(国立障害者リハビリテーション研究所)
https://www.rehab.go.jp/ri/departj/brainfunc/hibrain/research/03/
◾️M Pimentel-Ponce:Gamification and neurological motor rehabilitation in children and adolescents: a systematic review
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38065433/
◾️Alexandre Mazeas:Evaluating the Effectiveness of Gamification on Physical Activity: Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34982715/
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