10月30日、こども家庭庁により改定された「産前・産後サポート事業ガイドライン及び産後ケア事業ガイドライン」にて、産後ケア事業の実施担当者として「理学療法士」が明記された。
産前・産後ガイドラインは、令和6年の子ども・子育て支援法の改正により産後ケア事業を地域子ども・子育て支援事業に位置付け、国、都道府県、市町村の役割を明確化し、計画的な提供体制の整備を行うと定めている。
日本理学療法士協会は、内閣府特命担当大臣に対して2025年度予算概算要求に向けて「2.産後の運動器症状等に対する支援の充実」において、産後ケア事業の実施担当者に理学療法士を追記するよう要望していた。
当ガイドラインの活用により、母子保健事業などが効果的に運用され、どの市町村に住んでいても妊産婦や乳幼児等が安心して健康な生活ができるよう、利用者目線に立った支援体制の構築が期待される。
「産後ケア事業」で母子を一体的に支援
産後ケア事業は、市町村が母子保健法に基づき、分娩施設退院後から一定期間を助産師等の看護職が中心となり、母親の身体的回復と心理的な安定を促進し、母親のセルフケア能力や母子の愛着形成を促し、支援することを目的とする。
また本事業は、妊娠中から出産後に至る支援を切れ目なく行う観点から、こども家庭センターその他の関係機関との必要な連絡調整、他の母子保健・児童福祉に関する事業等との連携を図ることにより、母子とその家族に対する支援を一体的に実施するとしている。
対象者は出産後1年以内の母親と乳児であり、里帰り出産の場合や、流産や死産を経験した女性も含まれる。基本的な対象は母子であるが、父親・パートナーと母親が協力しあって育てていくという意識を持つことが重要であるという観点から、父親・パートナーへの支援を行うことにも触れている。
今回、「産後ケア事業ガイドライン」において「理学療法士」が実施担当者として明記されたことは、理学療法士が母子保健や地域ケアにおいて果たす役割の重要性が認められたものといえる。
この記載を契機に、産後ケア分野で理学療法士の専門性を活かした支援がさらに拡充し、母親や乳幼児の健康維持・向上に寄与することが期待される。
「理学療法士」が明記された事項および関連事項は以下の通り。
Ⅲ 産後ケア事業ガイドライン(一部抜粋)
5 実施担当者
助産師、保健師又は看護師のいずれかを常に1名以上置くこと。
※特に、出産後4か月頃までの時期は、母子に対する専門的ケア(乳房ケアを含む。)を行うことから、原則、助産師を中心とした実施体制での対応とする。その上で、必要に応じて以下の ①〜③の者を置くことができる。
① 心理に関しての知識を有する者
② 育児等に関する知識を有する者(保育士、管理栄養士等)
③ 本事業に関する研修を受講し、事業の趣旨・内容を理解した関係者(
理学療法士等)
※ 児を預かる場合の留意事項については、「8(2)児を預かる場合の留意点」を参照のこと。
6 事業の種類
産後ケア事業に対する地域におけるニーズや社会資源等の状況から、短期入所(ショートステイ)型、通所(デイサービス)型(個別・集団)、居宅訪問(アウトリーチ)型の3種類の実施方法がある。
7 実施の方法
(5) ケアの内容
産後ケア事業にて提供すべきケアの内容としては、下記のようなものが挙げられる。
① 母親への保健指導、栄養指導
1)保健指導(母親への身体的ケア)
2)栄養指導
② 母親の心理的ケア
③ 適切な授乳が実施できるためのケア(乳房ケアを含む)
④ 育児の手技についての具体的な指導及び相談
詳細については「【別添】産前・産後サポート事業ガイドライン及び産後ケア事業ガイドライン」をご覧ください。
引用・参考
■ 「産後ケア事業」の実施者に理学療法士が明記される(日本理学療法士協会HP)
■ 【通知】「産前・産後サポート事業ガイドライン及び産後ケア事業ガイドライン」の改定について(こども家庭庁HP)
■ 【別添】産前・産後サポート事業ガイドライン及び産後ケア事業ガイドライン(こども家庭庁HP)