2024年2月、愛知県豊橋市に理学療法士が運営する杖の専門店『近江一文字 豊橋店』がオープンし、理学療法士が運営する店舗として注目を集めています。
「近江一文字」は、オーナーである株式会社ゴールドクローバー(本社:滋賀県大津市)代表取締役の林 知史さんが1号店を開業。豊橋市は2号店となります。
近江一文字で扱う杖は、当事者として様々な杖をみてきた林さん自身がこだわり抜いて選んだ杖であり、アメリカの医師が開発した杖などを取り扱っています。また、2号店である豊橋店は、理学療法士である戀田祐司さんが責任者として、来店した方のヒアリングを通じて最適な杖を提案することを特徴としています。
今回、理学療法士が杖専門店にどのように関わっているのか、どのような杖を取り扱っているのかについて、近江一文字 豊橋店責任者である戀田祐司さん(脳卒中認定理学療法士)にお話を伺いました。
ー 近江一文字と出会ったきっかけについて教えてください。
戀田さん 総合病院に勤務していた際に、患者さんの退院時に杖を処方することがありました。当時、選択肢はほとんどなく、どれも同じだと思っていました。
その後、生活期で仕事をさせていただく中で、思った以上に高さが合ってない杖をホームセンターやネットで購入してことにより、逆に歩行に難渋されている方々がいることを知り、実際に国内の杖を取り寄せて調べてみました。どの杖も悪くないのですが、変わり映えせず、今一つ決め手にかけてると感じました。
そこで、調べた先に行き着いたのが「近江一文字」を営む林さんでした。林さんから、杖専門店としての成り立ちや想いを聞かせていただき、実際に店舗に伺い杖を手に取った瞬間には、完全にこれまで見てきた杖とは別物だと感じました。
圧倒的に使いやすく、そして使う人のことを考えた、これまでにない杖に衝撃を受けたことを今でも思い出します。
その後、林さんとお話を重ねるなかで、理学療法士としての知識や経験を活かした杖専門店として2号店をオープンする許可をいただき、2024年2月1日より愛知県豊橋市でオープンさせていただく形となりました。
ー 戀田さんは理学療法士としてお店でどのような関わり方をされていますか?
戀田さん お客様対応はすべて戀田が現場で担当しています。
店舗では、お客様のお悩み(痛み、脳卒中後遺症による麻痺、痺れ)をヒアリングし、杖が必要な経緯について簡単にお伺いしていきます。杖には大きく分けて2種類あることを簡単にご説明して、ヒアリングに基づいてその方に適した杖を紹介しています。
具体的には、転倒歴が多いこと、歩幅狭い、膝屈曲位歩行、小刻み(揃い型)歩行などバランス能力に問題が起こっている場合は「多点杖」をご提案します。歩くと疲れることや、膝の痛みなどバランス能力に問題が少ないと判断した場合には「1点杖」を提案する形をとっています。
また、フィッティングや杖を使った歩行練習、杖のメリットや気をつけるポイントなどをご説明させていただきます。
理学療法士という身体の専門的な知識や経験を持ったスタッフが販売や体験会に携わることで「杖の社会的な価値」を見直すきっかけを作りたいと考えています。
杖は「代償」ではなく、自分の生活を豊かにする「サポートツール」です。杖を使うことで移動が楽になり、他者に頼らず自分のペースで行動できます。自立や安全性を保ちながら、自分らしい生活を楽しむためのポジティブな道具だと捉えています。
ー どのような杖を取り扱っていますか?
戀田さん 近江一文字は、利用者の身体の痛みや悩みを解決することを目標とした、アメリカの整形外科医が開発したメディカル発想の杖、パワーステッキの日本総代理店です。
要介護のきっかけや、年間2万人以上の死亡事故につながる「高齢者の転倒事故」を防ぐことを第一に考えた商品を展開しています。
いくつか、実際に取り扱っている杖をご紹介します。
◾️クアッドケーン
カーボン製で持ち手が握る際に痛みが出にくい形状をしています。4点杖ですが杖先が可動する設計のため、「4点杖がいいけど揃い型からは離脱できそう」といった方におすすめの杖です。
◾️パワーステッキ2G
持ち手がT字ではなく特殊形状になっており、クッション性が高いため手の痛みが出にくいという特徴があります。
また、最大の特徴であるアブゾーバー機構(衝撃や揺れを緩和する装置や機構)は手や肩への負担を軽減し、特殊なゴム先と合わさることで前方への推進力を生み出してくれる杖になります。ある程度、歩行能力が高く、杖を使ってさらに速く楽に遠くまで歩けるようになりたい方におすすめしています。
◾️琵琶瑠璃
当店人気No.1のカーボン製の折りたたみステッキです。軽量かつ堅牢製に優れており、持ち手が握りやすいためとても扱いやすい杖になっています。折り畳むとポケットに入るサイズになるのも人気の理由の一つです。
◾️パワーグリップ
杖につける先ゴムです。柔らかいゴムを使っており、どの角度でついても全面接地し吸い付くような性質があります。
これにより圧倒的な滑りにくさを実現。衝撃吸収効果もあるため既存の杖に装着するだけでも使用感を高めてくれたり、腕の疲れなどを軽減してくれます。
戀田さん いま使っている杖が少しでも使いにくさを感じている方や、杖を使おうか悩んでいる方にご活用いただきたいという願いで商品を取り扱っています。
国内にある既存の杖も使いやすいですが、それ以上に使用感や質感が高い杖を多く取り揃えています。また、見た目だけにこだわって機能を置き去りした杖ではなく、私自身、理学療法士として「こんな杖たちをもっと早く知っておけばよかった」と思える杖のみを取り扱っています。
選択肢を多く持っておくことで、「杖はかっこ悪い」という理由で不安定な歩行を続けることによる転倒災害を防ぎたいと考えています。
身体の状況に合わない杖や、劣化して滑りやすい先ゴムを使っている方も本当に多くいらっしゃいます。ご自身にあった杖の高さや杖のメンテナンスなどにも、当店をご活用いただきたいです。
ー 今後の展望について
戀田さん 私自身、「杖は使わない方が良い」というのが病院でリハビリテーションに従事していた時のイメージでした。しかし、実際には回復状態や身体機能、ライフスタイルに合わせて、杖の特性・材質・形状を考えて、その方にあった杖を提案し、活用いただくことで歩行速度や持久力、身体機能の向上につながることを今は実感しています。
また、杖はメンテナンスをしてくれる場所がほとんどありません。杖先のゴムの耐久性も物によっては数年で劣化してしまい、穴が空いていてもそのまま使い続けてしまっている方も多くいらっしゃいます。何気なく勧められた杖をずっと使い続けているというのが実情ではないかと思います。なぜなら、そのほかの選択肢を知らないからです。
セラピストの方々が杖の効果や性質を理解し、多くの選択肢を持っておくことで対象者の方の生活は大きく変わることもある。そのようなことを知っていただけるきっかけに当店がなれば嬉しいです。
引用・参考
■ 近江一文字豊橋店 公式ホームページ
■ 近江一文字 オンラインショップ
■ 愛知県 初出店! 理学療法士が杖の専門店「近江一文字 豊橋店」を2月1日(木)にオープン(メディカル発想の杖でリハビリに貢献)(PRTIMES)
■ 高齢者の安全と健康を支える商品、杖の専門店「近江一文字」による折り畳み杖「琵琶瑠璃」の開発ストーリー(PRTIMES STORY)
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