厚生労働省は9月30日、新たな地域医療構想に関する検討会を開催し、「入院医療、在宅医療、構想区域」をテーマに、回復期の定義や名称の変更、高齢者救急対応に向けた回復期病床の役割強化と機能統合などについて議論した。
第9回検討会では、増加する回復期病床について言及があり、回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟の役割について議論が交わされた。地域包括ケア病棟については約8割が回復期医療を担い、残り2割が急性期医療を担っているという現状が指摘され、急性期と回復期の機能を統合することの重要性が強調された。
回復期の機能統合と名称変更の検討
厚生労働省は、急性期病院における患者の流れについて「急性期の患者の多くは自宅に退院し、回復期等の療養のため、他の病院・診療所に転院する患者は6~8%程度である」と資料を提示。
地域において「治し、支える」医療の実現を目指す上で、急性期の治療後に速やかな在宅復帰を促すことが重要であるとの考えが示された。
厚生労働省は、2040年に向けて増加する高齢者救急の受け皿として、急性期と回復期の機能をあわせもつことが重要になるとの考えを資料で説明。病床機能報告に関する議論として「【回復期】については、急性期の機能の一部も担うこととして位置付け、名称や定義を変更することについてどのように考えるか」と提起した。
これまで、現行の病床機能報告において【回復期】は、「急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能、特に、急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頸部骨折等の患者に対し、ADLの向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する機能」と定義されてきた。
今回、リハビリテーションに係る医療のあり方については、地域において「治し、支える」医療を実現できるように体制を整備し、地域で連携しながら、患者の身体機能等に応じて適切な場でリハビリテーションを提供することの必要性が提示された。
在宅医療などの構想区域の範囲拡大
新たな地域医療構想における課題として、構想区域の範囲についても検討された。
2040年頃を見据えると、人口規模が20万人未満の構想区域では医療需要の変化や医療従事者の確保が難しくなる可能性がある。そのため、必要に応じた構想区域の拡大が必要であると指摘されている。
在宅医療については、二次医療圏よりも狭い区域での議論が必要となる。構想区域においては、医療機関、訪問看護ステーション、歯科医療機関、薬局、介護施設などが連携しながら、在宅医療提供体制を確保することが求められている。
検討会では、医療と介護の連携体制の構築が図られるよう、市町村単位や保健所圏域等の地域の医療・介護資源等の実情に応じて弾力的に設定することなどが提案された。
回復期リハビリテーションの新たな役割と地域医療構想
地域医療の役割として、高齢者救急の受け皿となる機能、在宅医療を支える機能、救急医療や急性期医療を提供する機能が各地域ごとに求められる。
前回(第8回)検討会では、高齢者救急医療におけるリハビリテーションの早期介入が重要視され、救急搬送後すぐにリハビリテーションを開始し、早期退院を目指すことなどが議論された。これに伴い、訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションを継続できる体制の整備が不可欠との指摘もあった。
今回、「回復期リハビリテーションや特定診療科に特化した医療機関も、地域を支える重要な存在として位置付けるべきだ」という提案が示されており、今後の議論に注目があつまる。
同検討会は、2024年内の最終取りまとめを目指し、引き続き議論を進める方針。
引用・参考
▪️第9回新たな地域医療構想等に関する検討会(厚生労働省HP)
▪️資料2 新たな地域医療構想について(入院医療、在宅医療、構想区域等)(厚生労働省HP)