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2024.08.08

回復期リハビリ病棟でAI予後予測、ソニーと十勝リハセンターが共同開発



ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社(以下、ソニーネットワークコミュニケーションズ)と社会医療法人北斗十勝リハビリテーションセンター(以下、十勝リハビリテーションセンター)は、AI予測分析ツール「Prediction One」を通じた共同研究を行い、回復期リハビリテーション病棟における予後予測に活用可能なソリューションを開発した。

当AIツールに関する共同研究においては、回復期リハビリテーション病院の退院時における「歩行動作の予測」、「トイレ動作の予測」、「運動項目FIM※1の予測」について、高い精度で予測が可能であることを実証したと報告している。

また、十勝リハビリテーションセンターの研究グループは、脳卒中上肢運動麻痺の予後予測の有用性についても検討。分析の結果、予後予測モデルの決定係数は0.8686であり、「AIを用いた脳卒中上肢運動麻痺の予測モデルは先行研究と同程度の精度が確認され、その有用性が明らかとなった」と、雑誌「作業療法の実践と科学」に報告している。



(※1)FIM:機能的自立度評価表
(※2)FMA-UM:Fugl-Meyer Assessment for Upper Extremity(FMAの上肢項目)


AI予後予測ツールの導入メリット

同ソリューションは、十勝リハビリテーションセンターの過去6年分のデータを、ソニーのAI予測分析ツール「Prediction One」に学習させ、専用にカスタマイズしたAIモデルとして開発された。

リハビリテーションにおいて、個々の患者に応じた具体的な治療計画を検討する上で、予後予測の情報は必要不可欠といえる。一方、予後予測は文献検索や書籍等を参考にし、個々の患者毎に分析する必要があり、現場のセラピストにとって時間と労力を要するものでもある。

そのような背景に対して同社は、「AI予測分析ツール『Prediction One』を活用することにより、短時間で精度の高い予測が可能なうえ、病院のリハビリテーションマネジメントの効率化やセラピストの業務負荷軽減への貢献も期待されます」と、導入のメリットを伝えている。



予後予測については、セラピストの経験年数や経験値の差が判断に影響を及ぼす可能性も考えられる。その点、AIツールを使用することは、より一貫した医療を提供することにも繋がることが期待される。また、高精度な予後予測によって目標を明確にすることで、患者の不安軽減やリハビリへのモチベーション向上に寄与することも見込まれる。

同社は予後予測AIツールの導入メリットとして、職員の業務負担軽減や実績指数管理の効率化による施設基準の維持・向上などを掲げており、医療の質と病院経営の両面で貢献するツールとして紹介している。


現場が感じるAI予測モデルの可能性

十勝リハビリテーションセンターでは、入院日数の予測、患者様の転倒の予測、食事程度の予測などに関して「Prediction One」の活用の可能性があると考え、院内で施策が検討されている。

同病院で導入に関わったリハビリテーション部の小野さんは、AI導入を検討している医療関係の方々に対して、「現場目線で申し上げると、AI初心者であってもソニーネットワークコミュニケーションズから提供されるサポートを受けながら評価業務を実践するだけで良い結果が出ることが十分考えられます。予測モデル作成に必要なデータ蓄積など大変なところはありますが、当センターの予測モデルも踏まえて情報共有などを進めていきたいと考えています」とメッセージを寄せている。

ソニーネットワークコミュニケーションズの担当者は「Prediction Oneをプラットフォームとして、リハビリテーションに有用なAIモデルを活用いただくための環境構築を推進してまいります」とコメントしている。

引用・参考文献
◾️AIを用いた回復期リハビリテーション病棟向け予後予測ソリューションを十勝リハビリテーションセンターと共同開発(ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 プレスリリース)
◾️リハビリの予後予測にAIを活用!より良いサービス提供と業務効率化の両立を実現(SONY Prediction One HP)
◾️荒洋輔ら. 回復期脳卒中患者の上肢運動麻痺の予後予測に対するAI予測分析ソフトの有用性の検討:作業療法の実践と科学

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AI 共同研究
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