一般社団法人岐阜県リハビリテーション協議会は、災害時における迅速なリハビリテーション支援体制を構築を目的に、岐阜県と協定を締結した。
今回の協定は、岐阜県リハビリテーション協議会に設置する災害リハ推進部が災害対策本部となり、岐阜JRATの派遣調整、全国JRATとの情報共有などを行う。県は活動に関わる費用弁済や保険加入を行い、平時においては、岐阜県における災害リハビリテーションの認知度を高め、対応できる人材育成に力を入れていくことを目指すとしている。
協定団体地域がJRATではなく岐阜県リハビリテーション協議会である点は、他の都道府県とは異なる特徴となっている。
今回、県リハビリテーション協議会として協定を結ぶことに至った経緯や、今後の方針について同協議会の柴貴志会長よりコメントをいただいた。
ー 県リハビリテーション協議会が協定団体となった経緯
柴貴志 会長 2013年に岐阜JRATが発足し、岐阜大学医学部附属病院で青木医師を代表として、PT・OT・STそれぞれ1名を加えて事務局としてスタートをしました。まだ形式的な机上の体制でしかありませんでしたが、2016年の熊本地震の発生で早速その体制が試されることとなりました。しかし、2016年の熊本地震発生時に熊本県へ派遣できたのは、岐阜大学医学部附属病院の1チームのみであり、派遣先での活動実態もおぼろげで続くチームは編成できず、力不足を感じました。
熊本県の震災を機に緊張感が高まり、次年度より研修会の開催、「災害リハビリテーション対策マニュアル」の策定、県内の各圏域での災害拠点病院の指定、JRAT派遣時の準備金・活動日当の支給などを進めていくこととなりました。人材育成においては、「岐阜県災害時認定セラピスト」という指定研修を修了したセラピストに独自の認定制度を設けました。
一方で、行政の災害リハの認識度、活動費や保険の保障といった支援活動のバックグラウンドが得られないなど行政との協働が大きな課題でした。
行政との協働をめぐっては、岐阜県災害医療関係機関体制整備事業で岐阜県の医師会、歯科医師会、看護協会、薬剤師会の4師会が2015年に災害時医療救護協定を結んでおり、災害医療救護にかかわる会議及び研修会等を行っていました。そこへ岐阜JRATよりオブザーバーとしての参加が認められ発言等させていただく機会を得て、行政、医師を始め他職種への認識度は高まるも、協定締結には至らず、緊迫の課題でありながら持越し課題となっていました。
能登半島地震が発災後に地域JRATの受け入れが始まり、岐阜JRATも第一陣チームの派遣を準備したものの、「岐阜県知事からの派遣要請がない」ため許諾が得られず、第一陣チームの出発を再調整することとなり、同じ東海北陸ブロックながら先んじることができず、苦虫をかむ思いでした。
2024年、ようやく当協議会が岐阜県と協定を結ぶことになりました。協定内容は、自県での発災時に岐阜県の防災計画に基づいた災害リハ支援活動要請による各種の支援活動(生活不活発病の予防、避難所での環境評価、福祉用具の応急対応及び環境調整と必要なリハビリ支援など)、他県からの地域JRATの受け入れ、業務調整など広く災害リハ活動業務を行う任務にあたるものです。
ー 今後の方針
柴貴志 会長 今後は、協定締結という責任の中で、有事の課題と平時の課題を区分けして、課題解決を進めていくことになります。有事に向けての平時の準備となるが、今回の能登半島地震というリアルな現場に直面して、明日にでも起きるかもしれない大規模災害への当協議会の体制整備及び対応力・機動力の強化が第一の課題です。
もう一方で、「誰かがやってくれる」という一歩引いてしまった立場にならず、当事者意識を持てる啓発活動も重要で、そこを入口に、災害時のリハビリテーション支援活動へ誘って、誰もが共生していく地域社会の構築を目指していきたいと思います。
引用・参考
◾️ 災害時のリハビリテーション支援に係る協定の締結式を行います(岐阜県HP)
◾️ 県と県リハビリテーション協議会 避難所リハビリ支援協定(読売新聞オンライン)