オーストラリアの理学療法士らの研究グループは、散歩と理学療法士の教育介入が腰痛の再発予防に効果的であり、腰痛予防に関わる費用対効果がよいことを報告した。この研究は、2024年6月19日の「The Lancet」に掲載された。
本研究は、オーストラリア全土から18歳以上の男女を集めた介入研究として実施された。対象者の701名(男性136名、女性565名、平均年齢54歳)は、2つのグループにランダムに割り付けされた(介入群351名、非介入群350名)。
介入群は、散歩プログラムの参加と理学療法士による月1回の教育指導を行った。12ヶ月〜36ヶ月の追跡調査を行い、日常生活に支障をきたすような痛みを最初に経験(腰痛の再発)するまでの日数と費用対効果について、介入群と非介入群で比較した。
散歩プログラムは、週5日毎回30分以上歩くことが目標とされ、必要に応じて理学療法士がプログラムの調整を行った。
本研究の主な結果・非介入群と比較して、介入群では腰痛の再発リスクがほぼ半減した(再発までにかかった日数の中央値は、介入群で208日、非介入群で112日)。
・理学療法士の指導と散歩による介入が、非介入群と比較して非常に高い確率(94%)で費用対効果が良いことを示し、1QALYあたりの費用は7802ドル(本来かかる費用:28,000ドル)であった。
※QALY(Quality-Adjusted Life Years):質調整生存年
・散歩は場所を選ばず、低コストで誰でも出来る運動であり、これらの結果は腰痛の予防管理に重要な影響を与える可能性がある。
著者らは、「今回の参加者は女性が多く、一般集団への適応は注意が必要」とした上で、「散歩プログラムと理学療法士の指導が腰痛の再発を減らし、それに伴う医療制度への負担を軽減できる可能性がある」とコメントしている。さらに今後は、退院支援としてのプログラムの効果や、理学療法士以外の指導の効果、散歩以外の運動プログラムの効果についても検討する必要があると述べている。
■ 論文情報
【掲載誌】The Lancet Journal (2024年6月19日)
【論文名】Effectiveness and cost-effectiveness of an individualised, progressive walking and education intervention for the prevention of low back pain recurrence in Australia (WalkBack): a randomised controlled trial
【著者】Natasha C Pocovi, Chung-Wei Christine Lin, Simon D French, Petra L Graham, Johanna M van Dongen, Jane Latimer, Dafna Merom, Anne Tiedemann, Christopher G Maher, Ornella Clavisi, Shuk Yin Kate Tong, Mark J Hancock
【DOI】
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)00755-4
引用・参考文献
◾️Effectiveness and cost-effectiveness of an individualised, progressive walking and education intervention for the prevention of low back pain recurrence in Australia (WalkBack): a randomised controlled trial(The Lancet)
◾️腰痛を改善するたったひとつの簡単な運動は「散歩」、ウォーキングで腰痛再発リスクは半分に(Gigaine)
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