日本健康・栄養システム学会は、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組の効果的な推進とその質の向上を目的とした手引書「高齢者の口から食べる楽しみをいつまでも!!」を公開した。
同手引書は、介護保険施設・老人保健施設・通所事業所・通所リハビリテーション事業所を対象に行われた厚生労働省の調査研究事業の一環で、同学会が作成。2024年度診療報酬・介護報酬改定の解説と合わせて、一体的取組の意義について伝えている。
令和6年度介護報酬改定では、リハビリテーションマネジメント加算、口腔・栄養スクリーニング加算、栄養アセスメント加算など、リハビリテーション・口腔・栄養に関わるサービス提供について効果的・効率的な取組を進めるように新たな加算などが創設された。
同学会は、一体的取組に関する実態調査とインタビュー調査を通じて得られた課題の整理と対応策について検討を実施。その結果を踏まえて、介護保険を利用する施設や事業所において、より充実した一体的取組を円滑に進められるように「手引書」を編集したとしている。
内容としては、以下の構成となっている。
①一体的取組のための体制づくり
②2024年介護報酬・診療報酬改定による一体的取組の推進(施設ごとに記載)
③一体的取組の質の向上を目指して(入所前から在宅への支援別の解説)
・入所・利用前の説明および情報収集
・スクリーニング・アセスメント
・三領域の各計画書(原案)の作成
・本人・家族、ケアマネ等への説明
・実施、チェック、モニタリング、評価
④在宅支援のための情報連携
⑤医療・介護の情報連携
⑥介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用
⑦一体的取組の推進のための研修のあり方
資料:・絵で見る一体的取組(フロー)
・訪問栄養食事指導推進のための訪問サービス事例集
・実施計画書様式(記載例あり)
多職種連携によるPDCAの実践が重要
同手引書では、一体的取組において自立支援・重症化予防のための効果的な方法は、「多職種連携による一体的なリハビリテーション、栄養管理及び口腔管理を実施すること」としている。
一体的取組を多職種で行うためには、綿密な計画・実行・評価・効果判定(PDCA)を組織として行うことが必要となる。その点について、手引きでは、多職種連携の意義についても解説している。
管理栄養士が1施設に2名以上配置されている場合については、リハビリテーション、栄養、口腔が連携した「一体的取組」が実施されやすく、アウトカムへの効果があったと報告した。
また、歯科医師・歯科衛生士の関与については、リハビリテーション、栄養、口腔関連加算の算定、多職種が連携した業務プロセスの推進に寄与しており、歯科口腔アウトカムへの効果があったと記載している。
さらに、リハビリテーション専門職等が管理栄養士や歯科医師・歯科衛生士と連携する利点については、栄養管理士と協働してリハビリテーション計画に栄養管理を組み込むことで約9割の栄養改善が見られたことが報告された。
手引きでは、一体的取組により栄養状態の維持・向上とADLの改善に繋がり、専門職のモチベーション向上にも繋がることも報告した。
一体的取組を効果的に推進するために
手引きでは、多くの施設において一体的取組が減退傾向であることを指摘。その主な理由として、リハビリテーション専門職や栄養専門職の関与が低調であり、一体的取組を行う体制が整っていないことが課題として挙げられている。
一方、取組みを実践している施設の声として「日常の職種間の情報連携の頻度が増えた」、「ケアプランで共通した目標設定ができるようになった」、「入所者の新たな課題やニーズを早期に把握できるようになった」などの意見を紹介。
現場では、リハビリテーション・個別機能訓練、口腔・栄養の三領域の専門職が連携して目標を設定し、共同実施計画を作成することにより、ADL・IADLの維持改善に効果があると感じていることを伝えている。
同学会は、一体的実施が推進されるよう、管理栄養士による在宅訪問事例(居宅療養管理指導等)や評価等を一体的に記入する様式など、実践に参考となる情報を収載した「手引書」と「調査研究の報告書」を学会ホームページに掲載している。
引用・参考:
◾️ リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組に関する調査研究事業(日本健康・システム学会HP)
> 研究報告書(全体版)
> 手引書