日常生活における筋・筋群の作用や目的など、臨床と結びつけながら解剖学を実用的に学べる解剖学書“Moore’s Clinically Oriented Anatomy”の日本語版が8年ぶりに改訂された。
本書は「臨床に直結させ応用できる解剖学」をコンセプトに、人体解剖実習の手順に対応した章立て(基礎から背部,胸部,四肢,循環・内臓系,頭頸部,脳神経)で構成。本書1冊で全身の人体解剖がくまなく学べる内容となっている。
改訂版では、人体の体表解剖の写真やイラストに加え、MRI、CT、超音波画像などフルカラーの図が豊富に掲載されている。画像の読影に必要となる正常像の理解とともに、脱臼や骨折,関節症,靱帯断裂,椎間板ヘルニアをはじめとした代表的な疾患についても学ぶことができる。
本書の大きな特長の1つといえる「クリニカルボックス」(解剖と臨床を関連させた内容)では、領域疾患(病状)に関して黄色い背景のコラム記事として解説している。
クリニカルボックス内には、「解剖学的変異」、「診断手技」、「ライフサイクル」、「外科手術」、「外傷」、「病理」と6つのアイコンを付記しながら臨床的事項について説明しているので視覚的にも通読しやすくかつ理解しやすい。このボックスの通読により、臨床の場で活かせる解剖学的知識を培うことができる。
実際のクリニカルボックス
さらに、読者が迷子にならないよう、トピックごとに記載内容をまとめた「要点」が設けられている。最重要の知識が埋もれないように構成されており、復習する際に活用できる。
解剖学の習得において難儀する「筋・骨」、「神経・血管」に関連した機能は表にまとめてあり、イラストと本文が連動されていることから目当ての構造を探すのに必要な時間と手間を省くことができる。
筋骨格系については日常生活での筋・筋群の作用や目的を強調しながら記述されており、理学療法・作業療法を学ぶ学生にとっても実用的な内容となっている。
さらに、今版では「鼠径ヘルニア」「乳癌」など病態のメカニズムを解剖学的にアプローチした臨床に関するトピック動画が収載されている(英語音声あり)。
解剖学を体系立てて学びたい学生の自己学習や、ベテラン医療者の日々の振り返り・学び直しにも活用できる一冊となっている。
【書籍概要】
書名:「臨床のための解剖学 第3版」(翻訳書)
原著名:Moore’s Clinically Oriented Anatomy, 9th ed.
監訳:佐藤 達夫(東京医科歯科大学 名誉教授/東京有明医療大学 名誉学長)
坂井 建雄(順天堂大学保健医療学部 特任教授/順天堂大学大学院医学
研究科解剖学・生体構造科学 特任教授)
発行:2024年3月
体裁:A4変型判,1168頁,フルカラー
価格:14,500円+税