政府は、2040年頃までを見据えて段階的に取組む「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」を閣議決定した。急速な少子化・人口減少・高齢化に対応するため、医療・介護制度などの改革をビジョンに沿って進め、社会全体の健康と幸福の向上を目指す。
政府は「2024年度に実施する取組み」「2028年度までに検討する取組み」「2040年ごろを見据えた取組み」の3つの時間軸に分けて、具体的に社会保障の制度改革などに取り組むとしている。
2040年頃を見据えた課題と必要な取組については、健康寿命の延伸による活力ある社会の実現が明記された。超高齢社会となる日本において「健康寿命の延伸」が改めて重視されており、理学療法士等のリハビリテーション専門職においても健康増進への取り組みがより一層期待される。
資料では、「医療・介護」「働き方に中立的な社会保障」「地域共生社会」の3テーマについて、改革の実施時期や検討のタイミングに合わせて項目を整理されている。
(以下、リハビリテーションに関わる事項を一部抜粋)
2.医療・介護制度等の改革
<①来年度(2024年度)に実施する取組>
◆ 介護保険制度改革(第1号保険料負担の在り方の見直し)
低所得者の負担軽減に活用されている公費の一部について、現場の従事者の処遇改善を始めとする介護に係る社会保障の充実に活用する。
◆ 介護の生産性・質の向上(ロボット・ICT活用、経営の協働化・大規模化の推進、介護施設の人員配置基準の柔軟化等)
今後も人手不足が全産業で続くと見込まれる中で、介護現場における生産性向上の取組を進め、ケアの質の向上、介護職員の負担軽減や業務の効率化につなげるため、介護サービス事業者の介護ロボット・ICT機器の導入や経営の協働化・大規模化を推進する。
◆ 診療報酬改定、介護報酬改定、障害福祉サービス等報酬改定の実施・令和6年度の診療報酬改定については、医療現場で働く方の賃上げのための措置や適正化・効率化の取組などのメリハリのある対応を行う
・令和6年度介護報酬改定と障害福祉サービス等報酬改定については、介護や障害福祉の現場で働く方々の処遇改善を着実に行いつつ、サービスごとの経営状況の違いも踏まえたメリハリのある対応を行う。
<② 2028年度までに実施について検討する取組>
◆ 医療DXによる効率化・質の向上・保健・医療・介護の情報を共有可能な「全国医療情報プラットフォーム」を構築するとともに、標準規格に準拠したクラウドベースの電子カルテ(標準型電子カルテ)の整備を行う。
・診療報酬改定DXの推進に向け、医療機関・薬局等やベンダの集中的な業務負荷を平準化するため、2024年度の診療報酬改定より、施行時期を従来の4月から6月に後ろ倒しする。
◆ 生成AI等を用いた医療データの利活用の促進・質の高い医療等の効率的な提供のため、医療分野における生成AIを用いたデータの活用等について必要な検討を行う。
◆ 医療機関、介護施設等の経営情報の更なる見える化・介護サービス事業者の経営情報に関するデータベースについて、2024年4月からの施行に向けて取り組むとともに、職種別の給与総額等について継続的に把握できるような対応について検討を行う。
◆ 医療提供体制改革の推進国においては、都道府県・構想区域の病床機能等の状況の見える化、構想区域の効果的な事例(内容、検討プロセス等)の周知、医療提供体制上の課題や重点的な支援の必要性があると考えられる構想区域を設定してアウトリーチの伴走支援の実施など、都道府県における地域の実情に応じた取組を支援する。
◆ 医師偏在対策等オンライン診療の活用やタスク・シフト/シェアの推進を図る。
◆ 介護の生産性・質の向上(ロボット・ICT活用、協働化・大規模化の推進等)
・都道府県のワンストップ型の総合相談センターが窓口となって、地域の実情に応じた導入支援や伴走支援、DX人材の育成等の取組を進めるとともに、国において、介護ロボット等のUI(ユーザーインターフェース)の改善、ニーズを踏まえた機器開発、効果的な事例の横展開、課題の調査研究などを進める。
・エビデンスが確認された場合は、次期介護報酬改定を待たずに、社会保障審議会介護給付費分科会の意見を聴き、人員配置基準の特例的な柔軟化を行う方向で、更なる見直しの検討を行う。
・地域の関係者が連携し、利用者一人一人の状態に応じたサービスを提供できるよう、本人、介護事業所、自治体等の関係者が介護サービス利用者の介護情報等を電子的に共有できる情報基盤を整備する。
・自立支援・重度化防止に資するサービスの提供を推進していく観点から、介護報酬におけるアウトカム評価の在り方について、検討を行う。
◆ 介護保険制度改革(ケアマネジメントに関する給付の在り方、軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方)
・軽度者(要介護1及び2の者)への生活援助サービス等に関する給付の在り方については、介護サービスの需要が増加する一方、介護人材の不足が見込まれる中で、現行の介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」という。)に関する評価・分析や活性化に向けた取組等を行いつつ、第10期介護保険事業計画期間の開始(2027年度)までの間に、介護保険の運営主体である市町村の意向や利用者への影響等も踏まえながら、包括的に検討を行い、結論を出す。
◆ 高齢者の活躍促進・高齢者の地域における自立した日常生活の支援や社会参加を促進する観点から、総合事業の充実について、第10期介護保険事業計画期間以降を見据え、第9期介護保険事業計画期間(2024~2026年度)を通じた工程表を作成し、総合事業の活性化に向けた具体的な方策を講ずることにより、保険者が集中的に取り組むことのできる環境整備を進めることを検討する。
◆ 疾病予防等の取組の推進・各都道府県において、第4期医療費適正化計画(2024~2029年度)に基づき、保険者・医療関係者との方向性の共有・連携や、都道府県の責務や取り得る措置の明確化等の実効性向上のための体制構築を図りつつ、「健康の保持の推進」として、特定健診・特定保健指導や生活習慣病等の重症化予防の推進等に取り組む。
◆ 健康づくりや虚弱化予防・介護予防にもつながる地域社会と継続的な関係を保つ居場所づくり・高齢者一人一人に対し、フレイルなどの心身の多様な課題に対応したきめ細かな保健事業を行うため、運動、口腔、栄養、社会参加などの観点から市町村における保健事業と介護予防の一体的な実施を推進する。
<③ 2040年頃を見据えた、中長期的な課題に対して必要となる取組>
○高齢者数がピークを迎える中で、必要なサービスが提供できる体制の実現に向けた検討
○科学的知見に基づき、標準的な支援の整理を含め、個人ごとに最適化された、質の高い医療・介護・障害福祉サービスの提供に向けた検討
○人材不足がより深刻化する中で、ロボット・ICTやAI等の積極的な活用等を通じた、提供体制も含めた効率的・効果的なサービス提供の在り方の検討
○健康寿命の延伸による活力ある社会の実現に向けた検討
○人生100年時代を見据えた、持続可能で国民の満足度の高い社会保障制度の構築や世代間・世代内双方での公平性の観点から、負担能力に応じたより公平な負担の在り方の検討
引用:全世代型社会保障構築本部(内閣官房HP)
「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」についてを決定しました。