厚生労働省は11日、令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)を介護給付費分科会に提示した。
報告案では、人口構造や社会経済状況の変化を踏まえ、「自立支援・重度化防止に向けた対応」「制度の安定性・持続可能性の確保」などを基本的な視点として介護報酬改定を実施することが示された。
自立支援・重度化防止に係る取組みについては、「リハビリテーション・口腔・栄養の一体的取組を一層推進していくこと、LIFEを活用した質の高い介護を進めていくことが必要」との考えが示された。
報告案では、基本的な考え方を踏まえた主な改定内容と対象サービスが明記されている。
(以下、リハビリテーションに関わる事項を一部抜粋)
1.地域包括ケアシステムの深化・推進
(2)地域の実情に応じた柔軟かつ効率的な取組
③通所リハビリテーションにおける機能訓練事業所の共生型サービス、基準該当サービスの提供の拡充
【通所リハビリテーション★】
障害福祉サービスとの連携を強化し、障害者の身体機能・生活能力の維持・向上等に関する自立訓練(機能訓練)を拡充する観点から、通所リハビリテーション事業所において、共生型自立訓練(機能訓練)又は基準該当自立訓練(機能訓練)の提供が可能となることを踏まえ、自立訓練(機能訓練)を提供する際の人員及び設備の共有を可能とする。
④豪雪地帯等において急な気象状況の悪化等があった場合の通所介護費等の所要時間の取扱いの明確化
【通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護★・通所リハビリテーション】
豪雪地帯等において、積雪等のやむを得ない事情の中でも継続的なサービス提供を行う観点から、通所介護費等の所要時間について、利用者の心身の状況(急な体調不良等)に限らず、積雪等をはじめとする急な気象状況の悪化等によるやむを得ない事情についても考慮することとする。
(3)医療と介護の連携の推進
⑧医療機関のリハビリテーション計画書の受け取りの義務化
【訪問リハビリテーション★、通所リハビリテーション★】
退院時の情報連携を促進し、退院後早期に連続的で質の高いリハビリテーションを実施する観点から、医師等の従業者が、入院中にリハビリテーションを受けていた利用者に対し退院後のリハビリテーションを提供する際に、リハビリテーション計画を作成するに当たっては、入院中に医療機関が作成したリハビリテーション実施計画書を入手し、内容を把握することを義務付ける。
⑨退院後早期のリハビリテーション実施に向けた退院時情報連携の推進
【訪問リハビリテーション★、通所リハビリテーション★】
退院時の情報連携を促進し、退院後早期に連続的で質の高いリハビリテーションを実施する観点から、医療機関からの退院後に介護保険のリハビリテーションを行う際、リハビリテーション事業所の理学療法士等が、医療機関の退院前カンファレンスに参加し、共同指導を行ったことを評価する新たな加算を設ける。
(5)感染症や災害への対応力向上
④業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入
【全サービス(居宅療養管理指導★を除く)】
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点から、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合、基本報酬を減算する。
その際、一定の経過措置を設ける観点から、令和8年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しないこととする。
なお、訪問系サービス、居宅介護支援については、令和3年度介護報酬改定において感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備が義務付けられてから間もないこと及び非常災害に関する具体的計画の策定が求められていないことを踏まえ、令和8年3月31日までの間、これらの計画の策定を行っていない場合であっても、減算を適用しないこととする。
(6)高齢者虐待防止、安全性の確保等の取組の推進
①高齢者虐待防止の推進
【全サービス(居宅療養管理指導★、福祉用具貸与★、特定福祉用具販売★を除く)】
利用者の人権の擁護、虐待の防止等をより推進する観点から、全ての介護サービス事業者(居宅療養管理指導、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売を除く。)について、虐待の発生又はその再発を防止するための措置(虐待の発生又はその再発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること)が講じられていない場合に、基本報酬を減算する。その際、福祉用具貸与及び特定福祉用具販売については、そのサービス提供の態様が他サービスと異なること等を踏まえ、3年間の経過措置期間を設けることとする。
また、国の補助により都道府県が実施している事業において、ハラスメント等のストレス対策に関する研修を実施できることや、同事業による相談窓口について、高齢者本人とその家族だけでなく介護職員等も利用できることを明確化する。
②身体的拘束等の適正化の推進
【全サービス(施設系サービス、居住系サービス★を除く)】
身体的拘束等の更なる適正化を図る観点から、以下の見直しを行う。
ア 短期入所系サービス、多機能系サービスについて、身体的拘束等の適正化のための措置(委員会の開催等、指針の整備、研修の定期的な実施)を義務づける。また、身体的拘束等の適正化のための措置が講じられていない場合は、基本報酬を減算する。その際、1年間の経過措置期間を設けることとする。
イ 訪問系サービス、通所系サービス、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、居宅介護支援について、利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないこととし、身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録することを義務づける。
(7)認知症の対応力向上
②訪問リハビリテーションにおける集中的な認知症リハビリテーションの推進
【訪問リハビリテーション】
認知症のリハビリテーションを推進していく観点から、認知症の方に対して、認知機能や生活環境等を踏まえ、応用的動作能力や社会適応能力を最大限に活かしながら、当該利用者の生活機能を改善するためのリハビリテーションの実施を評価する新たな加算を設ける。
⑥介護老人保健施設における認知症短期集中リハビリテーション実施加算の見直し
【介護老人保健施設】
認知症を有する入所者の居宅における生活環境に対応したサービス提供を推進する観点から、現行の認知症短期集中リハビリテーション実施加算について、当該入所者の居宅を訪問し生活環境を把握することを評価する新たな区分を設ける。その際、現行の加算区分につ
2.自立支援・重度化防止に向けた対応
(1)リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組等
①訪問・通所リハビリテーションにおけるリハビリテーション、口腔、栄養の一体的取組の推進
【訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション】
リハビリテーション・口腔・栄養を一体的に推進し、自立支援・重度化防止を効果的に進める観点から、通所リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメント加算について、以下の要件を満たす場合を評価する新たな区分を設ける。
ア 口腔アセスメント及び栄養アセスメントを行っていること。
イ リハビリテーション計画等の内容について、リハビリテーション・口腔・栄養の情報を関係職種の間で一体的に共有すること。その際、必要に応じてLIFEに提出した情報を活用していること。
ウ 共有した情報を踏まえ、リハビリテーション計画について必要な見直しを行い、見直しの内容について関係職種に対し共有していること。
また、報酬体系の簡素化の観点から、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算(B)の要件について新規区分とし、加算区分を整理する。
②介護保険施設におけるリハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組の推進
【介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院】
リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養を一体的に推進し、自立支援・重度化防止を効果的に進める観点から、介護老人保健施設におけるリハビリテーションマネジメント計画書情報加算、介護医療院における理学療法、作業療法及び言語聴覚療法並びに介護老人福祉施設等における個別機能訓練加算(Ⅱ)について、以下の要件を満たす場合について評価する新たな区分を設ける。
ア 口腔衛生管理加算(Ⅱ)及び栄養マネジメント強化加算を算定していること。
イ リハビリテーション実施計画等の内容について、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の情報を関係職種の間で一体的に共有すること。その際、必要に応じて LIFE に提出した情報を活用していること。
ウ 共有した情報を踏まえ、リハビリテーション実施計画または個別機能訓練計画について必要な見直しを行い、見直しの内容について関係職種に対し共有していること。
③リハビリテーション・個別機能訓練、口腔管理、栄養管理に係る一体的計画書の見直し
【通所介護、通所リハビリテーション★、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護★、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院】
リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組を推進する観点から、リハビリテーション・個別機能訓練、口腔管理、栄養管理に係る一体的計画書の見直しを行う。
⑥訪問及び通所リハビリテーションのみなし指定の見直し
【訪問リハビリテーション★、通所リハビリテーション★】
訪問リハビリテーション事業所を更に拡充する観点から、介護老人保健施設及び介護医療院の開設許可があったときは、訪問リハビリテーション事業所の指定があったものとみなす。
また、介護保険法第72条第1項による通所リハビリテーション事業所及び訪問リハビリテーション事業所に係るみなし指定を受けている介護老人保健施設及び介護医療院については、当該事業所の医師の配置基準について、当該施設の医師の配置基準を満たすことをもって基準を満たしているものとみなすこととする。
⑦要介護・要支援のリハビリテーションの評価の差別化
【訪問リハビリテーション★】
要介護者及び要支援者に対する訪問リハビリテーションについて、利用者の状態像に応じた、より適切な評価を行う観点から、訪問リハビリテーションと介護予防訪問リハビリテーションの基本報酬に一定の差を設ける。
⑧介護予防サービスにおけるリハビリテーションの質の向上に向けた評価
【介護予防訪問リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーション】
介護予防サービスにおけるリハビリテーションの質を評価し、適切なサービス提供とする観点から、以下の見直しを行う。
ア 利用開始から12月が経過した後の減算について、拡大を行う。ただし、定期的なリハビリテーション会議によるリハビリテーション計画の見直しを行い、LIFEへリハビリテーションのデータを提出しフィードバックを受けてPDCAサイクルを推進する場合は減算を行わないこととする。
イ 要介護認定制度の見直しに伴い、より適切なアウトカム評価に資するようLIFEへリハビリテーションのデータ提出を推進するとともに、事業所評価加算の廃止を行う。
⑨退院直後の診療未実施減算の免除
【訪問リハビリテーション★】
入院中にリハビリテーションを受けていた利用者が、退院後早期に介護保険のリハビリテーションを開始する観点から、退院後一月に限り、入院中の医療機関の医師の情報提供のもと、訪問リハビリテーションを実施した場合の減算について見直す。
⑩診療未実施減算の経過措置の延長等
【訪問リハビリテーション★】
訪問リハビリテーションについて、リハビリテーション計画の作成に当たって事業所医師が診療せず、「適切な研修の修了等」をした事業所外の医師が診療した場合の減算(診療未実施減算)について、以下の見直しを行う。
ア 事業所外の医師に求められる「適切な研修の修了等」について、令和6年3月31日までとされている適用猶予措置期間を3年間延長する。
イ 適用猶予措置期間中においても、事業所外の医師が「適切な研修の修了等」の要件を満たすことについて、事業所が確認を行うことを義務づける。
⑪通所リハビリテーションの事業所規模別基本報酬の見直し
【通所リハビリテーション】
リハビリテーションマネジメントを実施する体制等が充実している事業所を評価する観点から、事業所規模別の基本報酬について、以下の見直しを行う。
ア 通常規模型、大規模型(Ⅰ)、大規模型(Ⅱ)の3段階になっている事業所規模別の基本報酬を、通常規模型、大規模型の2段階に変更する。
イ 大規模型事業所のうち、以下の要件を全て満たす事業所については、通常規模型と同等の評価を行う。
ⅰ リハビリテーションマネジメント加算の算定率が利用者全体で一定数を超えていること。
ⅱ リハビリテーション専門職の配置が一定数を超えていること。
⑫ケアプラン作成に係る「主治の医師等」の明確化
【居宅介護支援、介護予防支援、(訪問リハビリテーション★、通所リハビリテーション★)】
退院後早期に介護保険のリハビリテーションを開始することを可能とする観点から、介護支援専門員が居宅サービス計画書に通所・訪問リハビリテーションを位置づける際に意見を求めることとされている「主治の医師等」に、入院中の医療機関の医師を含むことを明確化する。
⑬介護老人保健施設における短期集中リハビリテーション実施加算の見直し
【介護老人保健施設】
短期集中リハビリテーション実施加算について、効果的なリハビリテーションを推進する観点から、以下の取組を評価する新たな区分を設ける。
ア 原則として入所時及び月1回以上ADL等の評価を行った上で、必要に応じてリハビリテーション実施計画を見直していること。
イ アにおいて評価したADL等のデータについて、LIFEを用いて提出し、必要に応じて提出した情報を活用していること。
また、現行の加算区分については、新たな加算区分の取組を促進する観点から、評価の見直しを行う。
(2)自立支援・重度化防止に係る取組の推進
②通所リハビリテーションにおける入浴介助加算(Ⅱ)の見直し
【通所リハビリテーション】
通所リハビリテーションにおける入浴介助加算(Ⅱ)について、利用者の居宅における入浴の自立への取組を促進する観点から、入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件である、「医師等による、利用者宅浴室の環境評価・助言」について、人材の有効活用を図る観点から、医師等に代わり介護職員が訪問し、医師等の指示の下、ICT機器を活用して状況把握を行い、医師等が評価・助言する場合も算定することを可能とする。
加えて、利用者の居宅における自立した入浴への取組を促進する観点から、入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件に係る現行のQ&Aや留意事項通知で示している内容を告示に明記し、要件を明確にする。
(3)LIFE を活用した質の高い介護
①科学的介護推進体制加算の見直し
【通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護★、通所リハビリテーション★、特定施設入居者生活介護★、地域密着型特定施設入居者生活介護、小規模多機能型居宅介護★、認知症対応型共同生活介護★、看護小規模多機能型居宅介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院】
科学的介護推進体制加算について、質の高い情報の収集・分析を可能とし、入力負担を軽減し科学的介護を推進する観点から、以下の見直しを行う。
ア 加算の様式について入力項目の定義の明確化や他の加算と共通している項目の見直し等を実施。
イ LIFEへのデータ提出頻度について、少なくとも「6月に1回」から「3月に1回」に見直す。
ウ 初回のデータ提出時期について、他のLIFE関連加算と揃えることを可能とする。
②自立支援促進加算の見直し
【介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院】
自立支援促進加算について、質の高い情報の収集・分析を可能とし、入力負担を軽減し科学的介護を推進する観点から、以下の見直しを行う。
ア 加算の様式について入力項目の定義の明確化や他の加算と共通している項目の見直し等を実施。
イ LIFE への初回のデータ提出時期について、他の LIFE 関連加算と揃えることを可能とする。
ウ 医師の医学的評価を少なくとも「6月に1回」から「3月に1回」に見直す。
エ 本加算に沿った取組に対する評価を持続的に行うため、事務負担の軽減を行いつつ評価の適正化を行う。
③アウトカム評価の充実のためのADL維持等加算の見直し
【通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】
ADL維持等加算について、自立支援・重度化防止に向けた取組をより一層推進する観点から、ADL維持等加算(Ⅱ)におけるADL利得の要件について、「二以上」を「三以上」と見直す。また、ADL利得の計算方法の簡素化を行う。
3.良質なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
(1)介護職員の処遇改善
①介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算の一本化
【訪問介護、訪問入浴介護★、通所介護、地域密着型通所介護、療養通所介護、認知症対応型通所介護★、通所リハビリテーション★、短期入所生活介護★、短期入所療養介護★、特定施設入居者生活介護★、地域密着型特定施設入居者生活介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護★、認知症対応型共同生活介護★、看護小規模多機能居宅介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院】
介護職員等の確保に向けて、介護職員の処遇改善のための措置をできるだけ多くの事業所に活用されるようにする観点から、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算について、現行の各加算・各区分の要件及び加算率を組み合わせた4段階の「介護職員等処遇改善加算」に一本化を行う。その際、令和6年度末までの経過措置期間を設けることとする。
また、以下の見直しを行う。
ア 職種間の賃金配分について、職種に着目した配分ルールは設けず、一本化後の新加算全体について、事業所内で柔軟な配分を認める。
イ 新加算の配分方法について、新加算のいずれの区分を取得している事業所においても、一番下の区分の加算額の1/2以上を月額賃金の改善に充てることを要件とする。
その際、それまでベースアップ等支援加算を取得していない事業所が、一本化後の新加算を新たに取得する場合には、収入として新たに増加するベースアップ等支援加算相当分の加算額についは、その2/3以上を月額賃金の改善として新たに配分することを求める。
ウ 職場環境等要件について、生産性向上及び経営の協働化に係る項目を中心に、人材確保に向け、より効果的な要件とする観点で見直しを行う。
(2)生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくり
①テレワークの取扱い
【全サービス(居宅療養管理指導★を除く)】
人員配置基準等で具体的な必要数を定めて配置を求めている職種のテレワークに関して、個人情報を適切に管理していること、利用者の処遇に支障が生じないこと等を前提に、取扱いの明確化を行い、職種や業務ごとに具体的な考え方を示す。
②利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置の義務付け
【短期入所系サービス★、居住系サービス★、多機能系サービス★、施設系サービス】
介護現場における生産性の向上に資する取組の促進を図る観点から、現場における課題を抽出及び分析した上で、事業所の状況に応じて、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の設置を義務づける。その際、3年間の経過措置期間を設けることとする。
③介護ロボット・ICT等のテクノロジーの活用促進
【短期入所系サービス★、居住系サービス★、多機能系サービス★、施設系サービス】
介護現場における生産性の向上に資する取組の促進を図る観点から、介護ロボット・ICT等のテクノロジーの導入後の継続的なテクノロジーの活用を支援するため、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、見守り機器等のテクノロジー(※1)を1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行うとともに、一定期間ごとに、業務改善の取組による効果を示すデータの提供を行うことを評価する新たな加算を設ける。
加えて、上記の要件を満たし、提出したデータにより業務改善の取組による成果が確認された上で、見守り機器等のテクノロジーを複数導入し(※2)、職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取組等を行っていることを評価する区分を設ける。
(※1)見守り機器等のテクノロジーとは、以下のアからウに掲げる機器をいう。
ア 見守り機器
イ インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器
ウ 介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資するICT機器(複数の機器の連携も含め、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る。)
(※2)見守り機器等のテクノロジーを複数導入するとは、少なくともアからウまでに掲げる機器は全て使用することであり、その際、アの機器は全ての居室に設置し、イの機器は全ての介護職員が使用することとする。なお、アの機器の運用については、事前に利用者の意向を確認することとし、当該利用者の意向に応じ、機器の使用を停止する等の運用は認められるものであること。
⑦人員配置基準における両立支援への配慮
【全サービス】
介護現場において、治療と仕事の両立が可能となる環境整備を進め、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、各サービスの人員配置基準や報酬算定について、以下の見直しを行う。
ア 「常勤」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法等による育児・介護等の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める。
イ 「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿って事業者が設ける短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱うことを認める。
(3)効率的なサービス提供の推進
①管理者の責務及び兼務範囲の明確化
【全サービス】
提供する介護サービスの質を担保しつつ、介護サービス事業所を効率的に運営する観点から、管理者の責務について、利用者へのサービス提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握しながら、職員及び業務の一元的な管理・指揮命令を行うことである旨を明確化した上で、管理者が兼務できる事業所の範囲について、管理者がその責務を果たせる場合には、同一敷地内における他の事業所、施設等ではなくても差し支えない旨を明確化する。
②いわゆるローカルルールについて
【全サービス】
都道府県及び市町村に対して、人員配置基準に係るいわゆるローカルルールについて、あくまでも厚生労働省令に従う範囲内で地域の実情に応じた内容とする必要があること、事業者から説明を求められた場合には当該地域における当該ルールの必要性を説明できるようにすること等を求める。
⑤退院時共同指導の指導内容の提供方法の柔軟化
【訪問看護★、定期巡回・随時対応型訪問介護看護】
退院時共同指導における指導内容について、文書以外の方法で提供することを可能とする
⑦通所介護、地域密着型通所介護における個別機能訓練加算の人員配置要件の緩和及び評価の見直し
【通所介護、地域密着型通所介護】
通所介護、地域密着型通所介護における個別機能訓練加算について、機能訓練を行う人材の有効活用を図る観点から、個別機能訓練加算(Ⅰ)ロにおいて、現行、機能訓練指導員を通所介護等を行う時間帯を通じて1名以上配置しなければならない、としている要件を緩和するとともに、評価の見直しを行う。
4.制度の安定性・持続可能性の確保
(1)評価の適正化・重点化
②理学療法士等による訪問看護の評価の見直し【訪問看護★】
看護業務の一環としてのリハビリテーションの提供実態を踏まえ、訪問看護に求められる役割に基づくサービスが提供されるようにする観点から、理学療法士等のサービス提供状況及びサービス提供体制等に係る加算の算定状況に応じ、理学療法士等の訪問における基本報酬及び 12 月を超えた場合の減算を見直す。
(2)報酬の整理・簡素化
①運動器機能向上加算の基本報酬への包括化
【介護予防通所リハビリテーション】
予防通所リハビリテーションにおける身体機能評価を更に推進するとともに、報酬体系の簡素化を行う観点から、以下の見直しを行う。
ア 運動器機能向上加算を廃止し、基本報酬への包括化を行う。
イ 運動器機能向上加算・栄養改善加算・口腔機能向上加算のうち、複数の加算を組み合わせて算定していることを評価する選択的サービス複数実施加算について見直しを行う。
5.その他
①「書面掲示」規制の見直し
【全サービス】
運営基準省令上、事業所の運営規程の概要等の重要事項等(※)については、原則として事業所内での「書面掲示」を求めている一方、備え付けの書面(紙ファイル等)又は電磁的記録の供覧により、書面による壁面等への掲示を代替できる規定になっているところ、「書面掲示」に加え、インターネット上で情報の閲覧が完結するよう、介護サービス事業者は、原則として重要事項等の情報をウェブサイト(法人のホームページ等又は情報公表システム上)に掲載・公表しなければならないこととする。
※事業所の運営規程の概要等の重要事項、居室及び食堂の広さ、届出事項、特別な食事の提供に係る情報(内容及び料金等)、移動用リフト使用時の留意事項等
⑤通所系サービスにおける送迎に係る取扱いの明確化
【通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護★、通所リハビリテーション★、療養通所介護】
通所系サービスにおける送迎について、利便性の向上や運転専任職の人材不足等に対応する観点から、送迎先について利用者の居住実態のある場所を含めるとともに、他の介護事業所や障害福祉サービス事業所の利用者との同乗を可能とする。
引用:第235回社会保障審議会介護給付費分科会(厚生労働省HP)
【資料2】令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)
厚生労働省より公開された資料に合わせて、PT-OT-ST.NETの介護報酬改定特設サイトも情報掲載を進めています。制度改定に向けた準備にご活用ください。