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2023.08.23

熊本大学、高齢者の大腿骨骨折を家庭で予測する新ツールを開発

国立大学法人熊本大学の研究グループは、多施設共同研究により高齢者の大腿骨骨折リスクを家庭で簡単に判定できるツールを開発、学術雑誌「Bone」で発表した。

今回、大学院生命科学研究部の宮本健史教授らの研究グループは、大腿骨骨折患者1,395名、非大腿骨骨折患者1,075名を登録し、過去に報告されている大腿骨骨折のリスクについて機械学習を用いて網羅的に評価を実施し、8個のリスク因子を同定した。

リスク因子
  • 日常生活動作レベル
  • ロコモーティブシンドローム
  • 過去12ヶ月の転倒歴
  • 1日あたりのお茶の摂取量
  • 認知機能
  • 骨粗鬆症の薬物治療
  • 歩行状態
  • 歩行時間

さらに、各因子の大腿骨骨折発生に対する寄与度についても同様に機械学習を用いて評価を行い、寄与度に応じたスコア化とスコア合計のカットオフ値の算出を実施。結果、各因子のスコアの合計値が5点以上の場合、大腿骨骨折のリスクが高まるとの研究結果を報告した。

各リスク因子のスコア
  • 日常生活動作レベル*1の低下がある(5点)
  • ロコモーティブシンドロームがロコモ度3*2と判定(4点)
  • 過去12ヶ月以内に3回以上の転倒歴がある(2点)
  • 1日のお茶の摂取が5杯以上(-2点)
  • 認知機能障害が少しでもある(2点)
  • 骨粗鬆症の薬物治療を受けている(-1点)
  • 補助具なしで歩行している(1点)
  • 少しでも歩行している(1点)

著者らは今後の展望として下記のコメントを寄せている。

大腿骨骨折は高齢者の代表的な骨折で、今後も増加することが予想されています。大腿骨骨折は骨折して初めて自分にリスクがあったことに気が付くことも少なくなく、骨折する前に自身の骨折リスクを知るツールが求められていました。

今回の大腿骨骨折の骨折リスク判定ツールは、病院等での採血等の検査が不要で、機械学習の知識がなくても家庭で実施が可能なものとして設計されました。

自身にリスクがあると判定された場合には、病院を受診するなどして適切な加療を受けることで、骨折を未然に防ぐことが期待されます。


本研究は、2023年8月15日に国際学術誌「Bone」に速報版が掲載されており一部閲覧が可能。





■ 掲載誌情報

【発表雑誌】 Bone
【論文名】 A machine learning-based scoring system and ten factors associated with hip fracture occurrence in the elderly
【著者】 Masaru Uragami, Kozo Matsushita, Yuto Shibata, Shu Takata, Tatsuki Karasugi, Takanao Sueyoshi, Tetsuro Masuda, Takayuki Nakamura, Takuya Tokunaga, Satoshi Hisanaga, Masaki Yugami, Kazuki Sugimoto, Ryuji Yonemitsu, Katsumasa Ideo, Yuko Fukuma, Kosei Takata, Takahiro Arima, Jyunki Kawakami, Kazuya Maeda, Naoto Yoshimura, Hideto Matsunaga, Yuki Kai, Shuntaro Tanimura, Masaki Shimada, Makoto Tateyama, Kana Miyamoto, Ryuta Kubo, Rui Tajiri, Xiao Tian, Fuka Homma, Jun Morinaga, Yoshinori Yamanouchi, Minoru Takebayashi, Naoto Kajitani, Yusuke Uehara, Kumamoto Stop OsteoPorotic hip fractures (K-STOP) group and Takeshi Miyamoto
【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.bone.2023.116865
【掲載URL】 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S8756328223001989
 

■ 用語解説

※1日常生活動作レベル
食事やトイレ動作などの日常生活の自立度で、Barthel indexという国際的な指標を用いて評価しています。満点は100点で、今回は少しでも日常生活動作の自立度が落ちて100点未満になると大腿骨骨折のリスクになることが分かりました。

※2ロコモーティブシンドロームのロコモ度3
ロコモーティブシンドロームとは、日本整形外科学会が提唱している移動能力が低下した状態のことで、将来要介護のリスクが高くなるとされています。ロコモーティブシンドロームはその程度に応じてロコモ度1~3に分類され、ロコモ度3が最重症です。ロコモ度はいくつかの方法で算出が可能ですが、家庭でアンケート形式で評価できる「ロコモ25」で24点以上の場合に、ロコモ度3と判定します。

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