東京大学と北里大学の研究グループは、4万人を超える日本の大規模データベースを解析し、90歳以上の超高齢心不全患者において、早期リハビリテーション介入が院内死亡率の低下、ADLの改善、入院日数の短縮、再入院率の低下と関連することを明らかにしたと発表した。
本研究では、2010年1月から2018年3月までに厚生労働科学研究DPCデータ調査研究班データベースに登録された90歳以上の急性心不全患者41,896症例を解析対象に、傾向スコアマッチングを使用して8587組を作成。その後、早期リハビリテーション群と非早期リハビリテーション群の比較検討を行い、早期リハビリテーションの有用性が検証されたと報告している。
プレスリリースでは、本研究発表のポイントして下記が述べられている。
◆90歳以上の超高齢心不全患者においても早期リハビリテーション介入が院内死亡率の低下やADLの改善、入院期間の短縮、再入院率の低下に関連する可能性を示しました。
◆今回の研究は、超高齢心不全患者に対する早期リハビリテーションの有用性を示した初めての大規模疫学研究です。
◆今後、多くの先進国で高齢心不全患者の急増が予想され、高齢の急性心不全症例に対する急性期リハビリテーションの有用性を示した本研究は、時代のニーズに合った研究であると考えられます。
著者らは、「本研究は、後ろ向きの観察研究であり、本研究によって早期リハビリテーション介入と予後の因果関係を証明することはできません。」とした上で、「本研究結果は、近年数多く報告されている心不全患者に対するリハビリテーションの有用性を高齢の急性心不全患者においても示したものであり、今後の高齢心不全患者に対する適切な治療指針の確立に貢献し得る知見であると考えられます。」と社会的意義を伝えている。
本研究は、2023 年3月1日に米国老年医学会(AGS)の学会誌 Journal of the American Geriatrics Society に掲載されており全文閲覧が可能。
■ 論文情報
【掲載誌】Journal of the American Geriatrics Society(オンライン版:3月1日)
【論文名】Association of early acute-phase rehabilitation initiation on outcomes among patients aged ≥90 years with acute heart failure
【著 者】Kensuke Ueno, MSc; Hidehiro Kaneko, MD; Kentaro Kamiya, PhD; Akira Okada, MD; Hidetaka Itoh, MD; Masaaki Konishi, MD; Tadafumi Sugimoto, MD; Yuta Suzuki, PhD; Satoshi Matsuoka, MD; Katsuhito Fujiu, MD; Nobuaki Michihata, MD; Taisuke Jo, MD; Norifumi Takeda, MD; Hiroyuki Morita, MD; Junya Ako, MD; Koichi Node, MD; Hideo Yasunaga, MD; and Issei Komuro, MD
【DOI】
10.1111/jgs.18283
引用・参考:
【プレスリリース】高齢急性心不全患者にも早期リハビリテーション介入は有効か?(東京大学病院HP)
高齢急性心不全患者にも早期リハビリテーション介入は有効か? ―国内ビッグデータ解析からの最新知見―(北里大学HP)
傾向スコア propensity score(日本理学療法学会連合HP)