はじめに
我々、医療介護従事者にとって傾聴の重要性は多くの方が認識しているかと思います。それでは皆様は、患者様とコミュニケーションをとる際どのようなことを意識されていますか。
このような場面を見かけることはありませんか?
この患者のニーズは本当に膝の痛みをとる事なのでしょうか。更にアドヒアランスを高め、良質なリハビリを提供できるでしょうか。
この記事をご覧いただくと、傾聴の基本、相手の本当のニーズを探る方法、相手の行動変容に繋がるヒントを得ることが出来ます。
傾聴とは
米国の心理学者でカウンセリングの大家であるカール・ロジャーズ(Carl Rogers)によって提唱されました。ロジャーズは聴く側の3原則として「共感的理解」、「無条件の肯定的関心」、「自己一致」を提唱しています⑴。
これらの原則を基に普段の臨床で活用できるよう、今回は、心理技法である動機付け面接法をご紹介いたします。
動機付け面接法
動機付け面接法(motivational interviewing:MI)」とは、アメリカの心理学者ウィリアム・ミラーとイギリスの 心理学者ステファン・ロルニックらによって開発された心理技法です(2)。
<動機づけ面接法の基本>
面接者側の具体的な話し方がOARSです。このOARSは、Open Ended Question(開かれた質問)、Affirm(是認)、Reflective Listening(聞き返し)、Summarize(要約する)の英語の頭文字をつなげたものです。
O(Open Ended Question):開かれた質問相談者が「はい」「いいえ」だけでは答えられない質問をします。相談者の状況を引き出したり、相談者が持っている行動変容へのアイデアや自信を引き出すきっかけにも効果的です。
例:情報によると膝が気になるとのことですが、どのようなことにお困りですか。
A(Affirm):是認面接者が相談者の持っている強みや努力、資源に注目できること、そして、そのことについて敬意を表した発言をします。面接者が心から感じる気持ちで是認します。
例:整体など時間や費用を費やして、良くなろうと努力されてきたのですね
R(Reflective Listening):聞き返し相談者が発言した言葉を相談者に返すことであり、単純な聞き返しと複雑な聞き返しがあります。単純な聞き返しは、相談者の発話を繰り返し、もしくは、言い換えて応答します。
複雑な聞き返しは、相談者の発話に対し、その発話の中で語られていない内容や続いて語られそうな内容を面接者が推測し付け加えて返します。
例:色んな工夫をされてきましたが、なかなか思うような効果がなく、今回当院受診とリハビリを希望されたのですね。
S(Summarize):要約相談者の発言をまとめて返すことです。要約する際、「一方で」や「そして」など並列の接続詞を用いたり、行動変容に向かう言葉(チェンジトーク)を要約の後半に持ってくるなどして、相談者の気づきを促します。
例:マッサージに通うなど工夫をしてきたが、なかなか効果が出なかった。その為、今回の受診やリハビリを通してしっかり治療をする決心をされたのですね。一方で、治療への不安もあるのですね。
動機付け面接法の4つのプロセス
上記の『OARS』に基づき、以下の4つのプロセスに沿って面接していきます。
a:かかわる b:焦点化する c:引き出す d:計画する
aでは相手の内面を理解し、関係性を育むプロセスです。bでは話題の方向づけと目標設定を行います。cでは患者さん自身から変わりたいという変化への動機付けを引き出すプロセスです。dでは具体的で実行可能性の高い計画を立てます。
動機付け面接法を用いることで、前述した例①に比べ以下のことが異なります。
・患者のニーズが痛みをとることより、階段昇降動作の改善であること
・患者の運動に対するモチベーションや自己効力感の向上
実用化に向けて
ここまで拝読していただいた方は、傾聴や動機付け面接法について理解できたかと思います。あとは実践あるのみですが、なかなか上手く実用化できないことも多いかと思います。そんな時、心強い仲間がいれば安心ですよね。
“ポケットセラピスト”では公認心理師を所有したセラピストや臨床経験豊富な心理職のセラピストも在籍しており、いつでも気軽に相談が可能です。
また、心理学に関する勉強会も行っている為継続して自己研鑽が可能です。是非一緒に傾聴力を高めて、目の前の患者さんをハッピーにしていきましょう!
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▼ 参考文献
1)日本保健行動科学会 https://kokoro.mhlw.go.jp/listen/listen001/
2)内閣府ユースアドバイザー養成プログラム5章支援の実施第1節相談における基本的態度と心得等 https://www.jahbs.info/TB2017/TB2017_1_6_1.pdf
3)医学書院第4回] 動機づけ面接で患者の意欲を引き出す https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2021/3408_05
この記事を書いた人
株式会社バックテック
肩こり・腰痛対策支援サービス ”ポケットセラピスト” を運営。
「全人類が健康に活き活きと暮らし、社会に貢献できる世界をつくる」をミッションに、慢性痛に悩む労働者を医療職がオンライン上でマンツーマンサポートしていくサービスを提供しています。ポケットセラピストにご興味がある方は、是非お気軽にお問い合わせください。