はじめに
普段の臨床中、「この患者さんは心理的なフォローが必要かもしれない」と思ったことはありませんか?実は私たちが臨床で出会う事の多い脳血管疾患患者の13~22%にうつ病が認められており、抑うつも含めると35%になるという報告もあります。
また、毎日の忙しい業務の中で、自分自身の心身へのケアも出来ているでしょうか?近年の日本社会のメンタルヘルスに関する調査によると、32.0%の企業が心の病は増加傾向にあると回答しています。心の病が多い年齢層別で見ると、1位は30代、2位は10~20代と、働き盛りな世代に多いということがわかります。
自他ともに心理的サポートが気になっている場合、まずどんなことに気づいていけばいいのか、一緒に確認していきましょう。
ストレスへの気づき方
皆さまは毎日の勤務で「最近Aさんはリハビリに消極的だなぁ」「治療期間が長く続いているのに痛みの変化があまり見られないなぁ」と感じたことはないでしょうか?
人はストレスを抱えると、仕事やその他の物事へのモチベーションが低下する傾向があります。患者さん目線でいうとリハビリが億劫になったり、労働者目線でいうと仕事のやる気が損なわれている場合、心理面へのストレスが生じていることも考えられます。
ストレスを引き起こす原因をストレッサー、ストレスで引き起こされる反応をストレス反応と呼びますが、それぞれの特徴について知っておくことで、クライアントや自分に起こったストレスへの気づきにつながるかもしれません。
例えば職場の管理職に抜擢された場合、普段は第一線の労働者でもあるため、過重労働になりやすいです。
また、家庭生活においても子育てなどの負担が増えるなど、課題の変化によってストレッサーが変化します。
ストレスの種類について知ろう
ストレッサーの種類と例物理的ストレッサー…例 異常な温度、騒音、紫外線
科学的ストレッサー…例 薬物、化学物質、タバコ
生物的ストレッサー…例 ウイルス、細菌、毒素等
心理社会的ストレッサー…例 不安、緊張、人間関係
ストレス反応の種類と不安心理的反応…例 不安、イライラ、恐怖、無気力、孤独感
行動的反応…例 攻撃的行動、ひきこもり、ストレス場面からの回避行動等
身体的反応…例 動機や息切れ、頭痛、腹痛、肩こり、腰痛、疲労感等
ストレスを感じやすい人の共通点
ストレスを感じやすい人の性格傾向としてアレキシサイミア(傾向)というものがあります(アレキシサイミアについては次にご紹介します)。
体の不調がストレスによるものだったとして、こういった特性の人はストレスに気づくことが難しい状況であることが多いです。そんな時、周りにストレスについて知っている人たちがいたら、声掛けやサポートを行うことで、心身へのダメージを予防できるかもしれません。
近年では労災認定される疾病は仕事の強いストレスを伴う精神疾患が多いと言われており(参考文献①)、それだけ精神的なケアを必要としている人が多いことがわかります。実際に日本国内の企業では、2015年から社内でのストレスチェックが会社に義務付けられており、メンタルヘルスに関する啓発も多く行われています(参考文献②)。
アレキシサイミアとは…アレキシサイミアの人格特性を持つ人は、自分の感情を認識することが苦手なため、ストレスが身体症状として現れやすい(参考文献③)、という特徴があります。
例えば、次の項目のうち当てはまるものが多い場合、ストレスを感じやすいかもしれません(参考文献④)。
1,人に気軽に悩みを打ち明けられない
2,相手の気持ちを考えすぎてしまう
3,自分の気持ちや言いたいことをうまく表現できない
4,最近見た夢について想起できない
5,家族や友人に自分の気持ちを伝えても、共感してもらえない
※1~5のうち、3つ以上当てはまる人は、ストレスを感じやすいかもしれません。悩みを溜めすぎないようにセルフケアをしていきましょう。
心理的サポートを臨床現場で活かすには
心理的な要因を身体的な問題と結びつけて解決策の糸口を見つける方法として、認知行動療法というものがあります。
認知行動療法とは、ある出来事に対する人間の反応を4つの側面(認知、感情、行動、身体)に分けて捉え、ストレスの要因となっている問題解決を手助けすることを目的とした精神療法です。疼痛治療や睡眠障害、ストレス対策と多くの場面で活用されている方法です。
特に慢性疼痛は薬物療法が効きにくいケースがありますが、日本整形外科学会の2012年腰痛腰痛診療ガイドラインでは、運動療法、患者教育、認知行動療法がGradeAとして強く推奨されています(参考資料⑤)。
ポケットセラピストで悩みを解決しよう
近年ではデジタルヘルスを活用して医療やヘルスケアの効果を向上させる試みが多く実践されています。その中で京都大学発のベンチャー企業バックテックが提供しているポケットセラピストもオンラインを使ってユーザーをサポートするサービスを提供しています。
ポケットセラピストではサポートするユーザーの心身の悩みについて、認知行動療法の技法などを用いてその解決方法を一緒に見つけていくのが主な活動となります。
活動中に心理面へのサポート・介入方法に触れることが出来るので、これから日々の臨床業務などで患者さんの心理面のサポートにも力を入れたいと思っている方には大変オススメです!
また、普段から患者さんのストレスを考えることで、自分自身のストレスにも気づく機会が増え、自他ともにストレスの対処法(ストレスコーピング)が身に付くこともできます。
加えて、心理的なサポートについて不安なことがあったら、セラピスト仲間から詳しい情報を集めたり、勉強会を開いてコメントをもらうことも可能です。
これまでとは違った新しい視点が生まれたり、新しい知識や経験を吸収できる機会も多く、筆者も日々刺激を受けています。
これを読んだ皆さまも、私たちと一緒に多くのクライアントの悩みをサポートしませんか?
▼ポケットセラピストにご興味を持たれた方
https://www.pocket-therapist-recruit.site/
▼個別で知りたいこと・ご不安がある方(カジュアルトーク)
Spir | Smart scheduling calendar (spirinc.com)
▼すぐにでも参加したい方
ポケットセラピスト応募フォーム (google.com)
▼ 参考文献①
タイトル:厚生労働省が2020年度の労災補償状況を公表! 精神障害の原因の1位は「パワハラ」 | メンタルヘルス・ストレスチェック・EAPサービスはセーフティネット (safetynet.co.jp)
URL:https://www.safetynet.co.jp/rousai2020/#:~:text
▼ 参考文献②
タイトル:働き盛り世代のメンタルヘルスの現状と課題
雑誌名:総合健診,43巻(2016)2号
[DOI:]https://doi.org/10.7143/jhep.43.304
▼ 参考文献③
公認心理師 完全合格テキスト第2版 公認心理師試験対策研究会・著
メンタルヘルスマネジメント検定 Ⅱ種Ⅲ種 公式テキスト第5版 一般社団法人国際EAP協会日本支部・著
▼ 参考文献④
タイトル:心理的構えがアレキシサイミア傾向を媒介した心理ストレスに及ぼす影響
雑誌名:日本心理学会第79回大会発表論文集,セッションID:1EV-139
[DOI:]https://doi.org/10.4992/pacjpa.79.0_1EV-139
▼ 参考文献⑤
タイトル:運動器慢性疼痛に対する認知行動療法理論に基づいた運動促進法
雑誌名:The Japanese Journal of Rehabilitation Medicin ,2018 年 55 巻 3 号 p. 206-214
[DOI:] https://doi.org/10.2490/jjrmc.55.206
この記事を書いた人
株式会社バックテック
肩こり・腰痛対策支援サービス ”ポケットセラピスト” を運営。
「全人類が健康に活き活きと暮らし、社会に貢献できる世界をつくる」をミッションに、慢性痛に悩む労働者を医療職がオンライン上でマンツーマンサポートしていくサービスを提供しています。ポケットセラピストにご興味がある方は、是非お気軽にお問い合わせください。