政府は、令和4年度診療報酬改定について、全体で▲0.94%のマイナスとなることを発表した。 医師や看護師、理学療法士等の診療報酬となる「本体」については+0.43%となる。うち、看護の処遇改善のための特例的な対応が+0.20%と含まれる。薬剤等については▲1.35%、材料加価格▲0.02%となっている。(
参考資料)
看護の処遇改善のための特例的な対応 +0.20%
注目される看護職員の処遇改善については、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善に充てられると但書があるものの限定的な記載に留まっている。
看護職員の処遇改善については、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3年11月19日閣議決定)及び「公的価格評価検討委員会中間整理」(令和3年12月21日)を踏まえ、令和4年度診療報酬改定 において、
地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関(注1)に勤務する看護職員を対象に、
10月以降収入を3%程度(月額平均12,000円 相当)引き上げるための処遇改善の仕組みを創設する。これらの処遇改善に当たっては、介護・障害福祉の処遇改善加算の仕組みを参考に、予算措置が確実に賃金に反映されるよう、適切な担保措置を講じることとする。
(注1)救急医療管理加算を算定する救急搬送件数200台/年以上の医療機関及び三次救急を担う医療機関
(注2)看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める。
公的価格評価検討委員会中間整理 全体の賃上げにつなげていく
岸田総理は、12月22日の「公的価格評価検討委員会中間整理」報告書の受け取りの場にて、「新しい経済の分配政策のなかで、先ずは公的価格の引き上げを行い、民間の呼び水として
社会全体の賃上げにつなげていくこと、また、恒久的な、適切な処遇改善につなげるよう中間整理の報告書の内容を活かしていきたい。来年の夏に向けて公的価格評価検討委員会のメンバーには更なる公的賃金の引き上げのために、デジタルなどを活用した見える化など、様々な手法を工夫して、大きな方向性を示して欲しい」と発言している。(
参考資料)
令和4年度診療報酬改定のスケジュールについて
令和4年度診療報酬改定については令和3年12月に示された「
令和4年診療報酬改定の基本方針」を基に具体的内容が議論される。診療報酬の点数の記載がない、いわゆる短冊とされる個別改定項目案については1月下旬〜2月上旬、2月上旬には点数ありの答申が示される見込みとなっている。
理学療法士、作業療法士等の処遇改善が実現されるために
公的価格の賃金引き上げについては、新しい経済の分配政策のなかで岸田内閣が肝入りとする政策である。一方で医療における公的価格の引き上げについては看護師に限定され議論が進んでいるよう見受けられる。これは議論の進展に政治的な圧力が働いていることも想像される。
処遇改善の運用に看護師のみならず理学療法士や作業療法士等も柔軟に認める但し書きが書かれたただけでなく、理学療法士・作業療法士、パラメディカルの職種に公平かつ適切に処遇改善が果たされることが重要である。そして、社会全体の賃上げ効果に繋がるよう取り組みが進展されることが望まれる。
ゆえに、今後の制度改定への議論の進展に注意が必要であり、時にこの議論に参画し声を上げていくことも必要に思う。
この記事を書いた人
友清直樹
PT-OT-ST.NET代表
1998年に学生時代に立ち上げたホームページを運営し、現在、PT-OT-ST.NETの代表。また、山王リハビリ・クリニックに勤務し、在宅リハビリテーションの現場に携わる。地域や予防の活動にも積極的に関わる。
厚生労働省より公開された資料に合わせて、PT-OT-ST.NETの診療報酬改定特設サイトも順次情報の更新を進めています。制度改定に向けた準備にご活用ください。