日本老年医学会と全国老人保健施設協会は11日、合同で「介護施設内での転倒に関するステートメント」を表明した。
同ステートメントでは、転倒は老年症候群の一つであり、必ずしも全てが医療・介護現場の過失による事故と位置付けられないと見解を提示。あらかじめ施設と入所者本人や家族の間で、転倒の発生や予防に関する情報共有と相互理解を得ることが重要であると強調している。
運動機能改善のためのリハビリテーションにより、活動量が増えて転倒の機会が増えることも懸念される。同ステートメントでは、「転倒リスクという面だけにとらわれず、高齢者の生活機能、QOL、生命予後に関わる可能性があると考えて、積極的な介入を実施・継続すべきである」と声明している。
また、同ステートメントのために実施したシステマティックレビューの総括として「運動介入によって転倒の発生が必ずしも増えなかったことは科学的エビデンスとして重要である」との見解も合わせて示された。
医療介護従事者などを対象として作成された同ステートメントの他にも、国民向けに内容が要約された「
介護施設内での転倒を知っていただくために~国民の皆様へのメッセージ〜」も作成されている。
今回発表されたステートメントは、日本老年医学会ホームページにて閲覧、ダウンロードが可能となっている。
※以下、日本老年医学会ホームページより引用
「介護施設内での転倒に関する4つのステートメント」
<ステートメント1>
【
転倒すべてが過失による事故ではない】
転倒リスクが高い入所者については、転倒予防策を実施していても、一定の確率で転倒が発生する。転倒の結果として骨折や外傷が生じたとしても、必ずしも医療・介護現場の過失による事故と位置付けられない。
<ステートメント2>
【
ケアやリハビリテーションは原則として継続する】
入所者の生活機能を維持・改善するためのケアやリハビリテーションは、それに伴って活動性が高まることで転倒リスクを高める可能性もある。しかし、多くの場合は生活機能維持・改善によって生活の質の維持・向上が期待されることから原則として継続する必要がある。
<ステートメント3>
【
転倒についてあらかじめ入所者・家族の理解を得る】
転倒は老年症候群の一つであるということを、あらかじめ施設の職員と入所者やその家族などの関係者の間で共有することが望ましい。
<ステートメント4>
【
転倒予防策と発生時対策を講じ、その定期的な見直しを図る】
施設は、転倒予防策に加えて転倒発生時の適切な対応手順を整備し職員に周知するとともに、入所者やその家族などの関係者にあらかじめ説明するべきである。また、現段階で介護施設において推奨される対策として標準的なものはないが、科学的エビデンスや技術は進歩を続けており、施設における対策や手順を定期的に見直し、転倒防止に努める必要がある。
引用:「介護施設内での転倒に関するステートメント」(日本老年医学会ホームページ)