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2021.08.13

ご当地体操動画で県民の暮らしを支える、岩手県理学療法士会の取り組み



岩手県理学療法士会は活動自粛に伴う不活発を予防するため「自宅でできる運動プログラム」を制作。県のホームページや厚生労働省の公開するご当地体操マップで紹介されるなど、活用が広がっています。

今回、同県士会で制作に携わられた小林太志さん(理学療法士)に、ご当地体操を制作することになった経緯、制作にあたり注力した点や苦労したこと、取り組みを通じて生じた社会的反響などについてお話を伺いました。


きっかけは地域からのニーズ

(以下、小林太志さん)

2020年4月に岩手県理学療法士会(以下:本会)会長より、「地域社会での在宅サービスの見合わせが起きている。当会で出来る代替え事業が出来ないか」との提案がありました。

また、県士会の執行理事会でも「各地域包括支援センターより、理学療法士から家で出来る体操を紹介してほしい」との問い合わせが来ているという報告があり、コロナ禍における不活発の予防ニーズが地域で生じていることを実感しました。

朝の情報番組では連日「自宅で出来る体操」の紹介がアスリートや芸能人によって紹介されていましたが、我々PTが提案できるのは、生活不活発病にならないために高齢者が安全に行える内容にする必要があると判断し、2つの「自宅で出来る運動プログラム」パンフレットを作成しました。



パンフレット制作時は、モデルは岩手県理学療法士会オリジナルTシャツを着用の上、笑顔でハツラツとした動きを意識してもらい写真撮影を行いました。また、紙面レイアウトは写真を多く、文字を最小限にし、高齢者がパッとみてイメージが湧くような明るい雰囲気の作りとしました。

その後、パンフレットの内容を動画としてYouTubeで配信することで、より県民の暮らしに貢献できるのではないかと本会内で話し合われ、動画版を制作することになりました。

パンフレットを基に動画を制作するわけですが、動画作成が不慣れなため完成までには多くの失敗がありました。


動画制作は失敗の連続

動画作成当初、3密を避けるため、まずは屋外でロケを行いました。

その撮影した動画データを確認してみると、風の音や景色に目が行き、モデルにどのようなリズムでどのような動きを求めるのか、どのような言葉で動きを伝えるのかといった内容が伝わってこない。

全体の構成の検討とリハーサルも不十分であったため、非常に分かりにくい動画となっていました。

実際に、運動療法を業務としていない知人に初撮りの動画を見てもらったのですが、「この動画ではどのように運動をしたら良いのか分からない」という感想をもらいました。



動画撮影 初期の様子


今回の動画でターゲットとなる一般の方は、(運動の掛け声の)言葉の受け止め方、体操をする姿勢もそれぞれ違う。その観点が抜け落ちており、体操動画とはかけ離れたものとなっていた事に気付きました。

そこで、それらの失敗をもとに以下の6つのことにポイントを置いて撮影の軌道修正を行いました。


1.撮影環境は明るく静かでモデルが目立つよう白を基調とした部屋とすること

2.動きを伝える前に基本姿勢がどうであるかを十分に伝える事こと

3.「それでは」や「せーのっ!」など、いつ、どのタイミングでどのように動くか、動いた時にどこが伸びた感じがすると良いかを伝えること

4.動きによってカメラアングルやモデルの向きを工夫すること

5.ナレーションのセリフとモデルの動きを合わせるための脚本作りとリハーサルを十分に行うこと

6.明るい雰囲気の音楽や岩手県理学療法士会のマスコットキャラクターのアイピットくんによる説明など親しみやすさを感じられ、印象に残るものになるようにすること


動画制作時に使用した実際の資料



地域の活動から、全国的な取り組み事例へ

今回の取り組みを通じて、社会的な反響がいくつかありました。

身近な例として、知人の勤務施設(デイサービス)では、この「自宅で出来る運動プログラム」を毎日、朝の挨拶の後に職員と利用者で実践されていると伺いました。

その結果、体操を行う前に利用者自ら椅子の準備をしたり、グループワークでの運動範囲が増えたり、何気なく座っているときにストレッチの動きを行ったりと、活動量が拡大しているという話もお聴きしています。




また、本会主催の高齢者運動教室では、動画の内容を実際に対面で説明して、自宅でもパンフレットあるいは動画を見ながら運動プログラムを行なえるように工夫しました。

実際に、訪問リハビリテーションでとある御宅にお伺いした際、利用者から「毎日運動プログラムの動画を見ながら体を動かしています」という嬉しい声もいただきました。

そして、岩手県内の主要地方紙に紹介され、さまざま活動の積み重ねが厚生労働省ホームページ内の「ご当地体操マップ」月間再生回数ランキング第3位(2021年3月時点)として表れたのだと感じています。(※)

(※)厚生労働省は全国の自治体が考案した、自宅でできる体操動画を特設サイトで紹介。748本の動画が掲載される中、岩手県理学療法士会が制作した「自宅でできる運動プログラム『ストレッチ編』」が再生回数で上位にランクインした。


全国の仲間と共有して、より良い取り組みへ

今回、本会では、「自宅で出来る運動プログラム」の動画版を公開するに至りましたが、その過程には、地域包括支援センターからの相談があり、その相談を受けて同運動プログラムのパンフレット版が先に出来上がっていたということがあります。

今後の展望として、決まった形がないこのような企画を継続するためには、「求められていることや必要なことは何か?何を伝えたいか?どのような動画にすればいいか?」といった部分をなるべく明確にし、その中でセラピストの専門性を活かしたセラピストならではの質を保ったコンテンツの作成に至ることが出来ればと思っています。

そのためには、地域の方とのコミュニケーションやセラピスト間での情報共有が重要だと思います。このように取り上げていただくこともその重要な情報共有であると考えています。

地域の皆様、全国のセラピストの皆様、今後ともよろしくお願いいたします。





引用・参考
■ 自宅で出来る運動プログラム(岩手県理学療法士会HP)
集まろう!通いの場 ご当地体操動画(厚生労働省HP)

関連タグ
介護予防 厚生労働省 動画
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