日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷の全国調査が26年ぶりに行われました。調査結果では、外傷性脊髄損傷の受傷原因は「平地転倒」が最多であり、特に高齢者では平地転倒による受傷割合が高いことが明らかとなりました。
調査は、全国の二次救急・三次救急施設を対象に調査表を配布し、2018年1月から12月までの急性期治療をおこなった外傷性脊髄損傷について質問を実施。2804施設(有効回答率74.4%)が回答した計4603人分のデータを分析しています。詳しくは
「日本せきずい基金ニュース No87」を御覧ください。
高齢化が大きく影響した調査、外傷性脊髄損傷の発生率は100万人あたり49人
今回の調査が行われた2018年の結果では、外傷性脊髄損傷の発生率は100万人に対して49人でした。1990年〜1992年に実施した前回調査では発生率は39〜41人(100万人あたり)であり、2つの世代で比較すると発生率が増加していること、平均年齢やピーク年齢が大きく上昇していることが明らかとなりました。
これらの変化については、高齢化による影響が大きく関与していると考えられています。
日本せきずい基金 会報87号 日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷の全国調査より
1位が平地転倒、2位が交通事故、3位が低所からの転落
調査全体として、外傷性脊髄損傷の受傷原因は平地転倒(38.6%)が最多でした。年齢でみると、高齢者では平地転倒による比較的軽傷の頚椎損傷が多いことが、今回の報告の中では述べられています。
一方、10代ではスポーツ外傷(43.2%)が外傷性脊髄損傷の原因で最多でした。若い世代の外傷性脊髄損傷は、高所転落など高エネルギー外傷に伴う、胸髄・腰髄損傷も多く、完全麻痺を来しやすいと言われています。また、骨傷を伴って破綻した脊椎に対する手術治療の割合も多く、リハビリテーションではそれらの背景を踏まえながら行うことが重要といえます。
日本せきずい基金 会報87号 日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷の全国調査より
高齢者の転倒予防対策、脊髄損傷予防にも重要
今回の調査から、脊髄損傷の発生を予防するという観点からも、高齢者の転倒を予防することは重要と言えます。
バランス訓練や筋力増強訓練などの運動療法のみならず、転倒しにくい生活環境の整備、杖や歩行器などの適切な歩行補助具を使用するなどの、多様な転倒予防が求められていると調査報告の中で伝えられています。
参考引用:
■ JSCF NPO法人 日本せきずい基金
■ 会報87号 日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷の全国調査