日本理学療法士学会の精神心理領域理学療法部門は、精神科療養病棟における患者に対して理学療法が効果がある研究報告についてプレスリリースした。
プレスリリースされた研究報告は、
精神科病棟入院患者の退院計画にはロコモが影響すること。また、
精神疾患を有する大腿骨骨折患者における理学療法の帰結に関する多施設研究では、日常生活活動が改善し、約半数が歩行の再獲得が期待できると報告している。
これらの研究の背景として、
精神疾患患者の入院が長期化しており、入院患者の身体機能の低下や合併症がさらに退院を困難にしている状況があると言われている。現在、精神科病棟の平均在院日数が277日であり。精神科入院患者の現状として入院が1年以上となっている患者は20万人ともいわれている。(
出典:精神・障害保健課調べ)
そのため、長期化する精神疾患患者の身体障害に対して、令和2年度診療報酬改定で、精神療養病棟入院料を算定する患者が、別に疾患別リハビリテーション料を算定できるようになった。
日本理学療法士学会の精神・心理領域理学療法部門、代表運営幹事の上薗紗映氏はこれらに対して以下のメッセージを寄せている。
上園氏 メッセージ
今回の診療報酬改定で、精神科療養病棟での疾患別リハビリテーション料算定が算定可能になりました。
精神科療養病棟は、ひらたくいうと、重症でかつ慢性の精神疾患を持つ患者さん達が入院する病棟です。この病棟は、いわゆる包括病棟ですので、出来高算定となる疾患別リハビリテーション料が算定できるということは非常に大きな改定となりました。
というのも、精神疾患を持つ患者さんは、生活空間等の狭小化や高齢化の影響により、身体合併症を併発したり、いわゆるロコモティブシンドロームやフレイルといった状態になる方は多く、身体的なリハビリテーションも非常にニーズがありましたが、今まではサービスで行わざるを得なかったため、現場に療法士の数が増えてこなかったからです。
しかし、算定が取れるようになれば、ニーズに応じて療法士の数を増やすことも可能になってきますし、これは患者さんにとっても、そのご家族にとってもよい知らせとなったはずです。
日本理学療法士協会精神心理領域理学療法部門としては、今現場にいる理学療法士として精いっぱいのことをしようと、多施設研究をしたり、リハ医の先生方と組んで科研費に取り組んだりし、その成果を論文にまとめています。今回発表させていただいた論文がその一部になりますが、今後もリリースを続けていく予定です。
このような動きをしていく中で、どのように理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が関与して結果を出していけるかどうかについては、今現場にいる我々、近い将来この分野に飛び込んできてくださる方々と一緒に頑張っていくことになると思います。
是非、少しでも興味を持ってくださった方がいれば、当部門の研究会や研修会等へご参加ください。
精神・心理領域理学療法部門
代表運営幹事 上薗 紗映
※画像クリックで拡大されます
<第6回精神・心理領域理学療法部門研究会のご案内>
テーマ:事例から学び、エビデンスを構築する
会 期:2021年3月13日(土)・14日(日)
会 場:Web開催
大会長:石橋雄介(秋津鴻池病院)
特別講演① 「歩行の知覚・認知制御:精神疾患に対する転倒予防への示唆」
樋口貴広 先生(首都大学東京)
特別講演② 「統合失調症を身体と運動から理解する:行動・脳・介入研究の融合から」
浅井智久 先生(ATR認知機構研究所)
教育講演 「精神科領域における理学療法の過去・現在・未来」
細井匠 先生(武蔵野中央病院)