日本離床学会は新たな取り組みとして、参加費無料で誰でも参加できる「ネット症例相談カンファレンス」を定期的に開催している。
今回、同学会の会長であり理学療法士の曷川元さんに、ネットカンファレンス開催に至った経緯、実際に開催してみて感じること、そして学会として取り組む「新しいカンファレンス様式」へのチャレンジについて話を伺った。
" 離床 ”というコンセプトを多くの方に届けたい
私たち、日本離床学会は「ねたきりゼロ」を目指して、離床に関する情報発信や学会、研修会、市民向け教育講座などの啓発活動を行ってきて、今年で16年目になりました。離床というコンセプトを多くの方が知ることにより、患者さん自らが率先して起きてくれる文化を築きたい、これが学会の願いです。
今は、世界の最新情報を皆さんに届けるということも重要と考え、世界離床ネットワークと連携をとりながら、情報配信にも力を入れています。
しかし、新型コロナウイルス感染症が今年の2月頃から広がりをみせはじめ、本会も協議の結果、対面式の研修会や学会は安全を鑑みて中止と判断いたしました。
その様な状況でも、離床に関する相談等を会員の方から多く寄せられました。なんとか、その声に応えたいとの思いから、私たちはオンラインで何ができるか検討を重ねました。そして、「新しいことに挑戦しよう!」を合言葉に企画、運営に至ったのが「
インターネット生中継セミナー」でした。
さらに運営を続けていると、コロナの影響により院外での学び場にも参加し難い状況から、新人教育の面でもお困りがあると声を聞いていたので、何とか悩みを解消できないかと考え、「
ネットカンファレンス」を無料のアクティビティとして開始することに至りました。
垣根を超えて、臨床思考過程を観ながら学ぶ
ネットカンファレンスの素晴らしいところは、院外の方と意見や情報交換ができるという点です。離床は多職種で連携することが重要になりますが、「オンラインカンファレンス」では院外のプロフェッショナルの方とweb上で繋がり、全国の仲間からアドバイスを得ることが出来ます。
オンラインカンファレンスでは、「全国の仲間に症例の困っていることを相談できる」を一つのテーマに取り組んでいます。
実際のカンファレンス映像を見ていただくことでより伝わるかと思いますが、私などが進行役を担い、相談者からの症例提示に対してデータやレントゲン写真などを画面共有を使いながら情報を共有、意見交換を進めます。
そして、症例の「今困っていること」をオンライン上で参加する全国の仲間にタイムリーに疑問を投げかけ、チャット欄などを使いながらアドバイスをもらいます。
参加者は100名から多くて200名程度。職種としては理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が約7割、さらに医師、看護師の方も参加いただいています。皆さんからはアドバイスのみならず、ベテランとしての臨床上の知見なども頂けます。コメントは建設的な意見が多く、相談者も匿名で参加が可能で大変好評です。
何より、職種と所属施設を超えたディスカッションを通じて、垣根を超えて様々な臨床思考過程を観ながら学べることは、大きなメリットではないかと感じています。
頼りになるお兄さんがいる学会を目指して
カンファレンスを進めていると、回復期、在宅における離床をどのように考えたら良いかという疑問も上がっています。多角的に捉えることが出来るのもネットならではだと感じています。
ちょっとした疑問をチャットで気軽に相談できるので、ぜひ経験の若い方には悩み事を自分の中に閉じ込めずに、ネットカンファレンスで悩みを出して行ってもらえたら嬉しいです。
ネットカンファレンスへの参加方法は、本会ホームページからメーリングリストに登録いただくことでカンファレンスのお知らせが届きます。もちろん、メーリングリスト登録もカンファレンス参加も無料ですので、気軽にご参加ください。
日本離床学会の目指しているところとして、離床の啓発はもちろんですが、一番は「おもしろい!」「斬新で今までにない学会」だと思っていただきたく活動しています。著名な先生がいる学会も素晴らしいですが、私たち日本離床学会は「頼りになるお兄さんがいる学会」のような存在になれればと思います。
是非、気軽に症例などご相談をお寄せください。今までにない学会、新しいカンファレンス様式を一緒に楽しみましょう。
本日は有り難うございました。
参照:日本離床学会ホームページ