関節拘縮を基礎科学の観点から紐解く、書籍「拘縮治療のエビデンスと臨床応用」が金岡恒治氏(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)と蒲田和芳氏(広島国際大学 リハビリテーション学科教授)の監修の元、発行した。
同書は、拘縮治療に関わる情報の医学的根拠を求めて、拘縮治療においてキーワードとなる項目を世界中の論文から検索して収集。
論文を分析、検討した上で「十分なエビデンスがあり国際的にも承認されていること」「エビデンスは十分とは言えないが今後の重要な研究テーマとなること」「真実と思われていたが実は疑わしいこと」の3項目に分類。各章末に「まとめ」として述べられている。
全6章構成の中では、ラットを用いた基礎研究より明らかとなった知見から、セラピストと医師の拘縮治療まで多岐に渡り紹介。
ハイドロリリースの項では、QRコードを読み込むことで動画が閲覧可能。ハイドロリリースは注射手技のためセラピストが直接実施することは困難ではあるが、有用性や効果のメカニズム、理学療法との併用などについて理解を深めておくことは重要となる。
総監修:蒲田和芳氏メッセージ
(蒲田氏)
拘縮治療が容易ではないことは明らかです。
その難しさを象徴するように、徒手療法だけとってもみても、理論、治療技術、対象の選定、効果検証などのあらゆる面で玉石混交といえます。
最近では、徒手療法の理論を応用して、テニスボールやつぼ押し棒などの器具を用いて、組織を圧迫したり振動を与えたりして可動域を拡大する「~リリース」がブームとなっています。
それらの多くは、一時的な可動域の効果を示した研究結果はあるものの、組織の滑走性を精密に計測した研究はほぼないに等しい状況です。
臨床現場では治療時間を効率化するため、「セルフケア」という用語を用いて患者に可動域拡大の一旦を担わせることが多いと聞きます。しかしながら、その滑走性に対する効果、あるいはそれを長期間繰り返すことによる瘢痕化・線維化といった副作用への影響などについてはほとんど検証されていません。
したがって、副作用を起こさず、確実に伸張性と滑走性に効果を及ぼすことが可能な徒手療法が必要とされています。 そこで、「完全な他動運動可動域の回復」を達成するための知識の獲得を求めて本書を企画しました。
この書籍の情報を日々の臨床や研究にご活用いただき、さらに、この内容を数年後には大幅に改定しなければならないくらいに、拘縮治療についての研究が飛躍的に進むきっかけになることを祈念します。
【本書概要】
■タイトル:拘縮治療のエビデンスと臨床応用
■発行元:株式会社 gene
■価格:¥4,000 (税 別 )
■判型・ ページ 数:B5判・280P