頭蓋仙骨系の手技というのをご存知でしょうか。巷でいう「小顔矯正」の類ではなく頭蓋骨や仙骨をテコにして自律神経を調整するというモデルの手技体系です。頭蓋仙骨療法＝クラニオセイクラル・セラピーという名称で知られています。

適応は大きく分けて３つです。まず眼、耳、鼻や顎関節の不調、頭痛など頭部顔面の症状、次に腰痛や坐骨神経痛などの各種の疼痛、最後が自律神経系の症状です。

顔面頭蓋の症状については滲出性中耳炎や花粉症へのアプローチが特に有用であると考えています。これらの症状の患者さんでは篩骨や頬骨、側頭骨の可動性が減少しています。これらの骨にごく弱い持続的な力（５グラム）をかけて可動性を回復させると繰り返し起こる炎症が軽減されます。口蓋骨を調整することで迷走神経の咽頭枝の機能が改善されるようでこちらも鼻の症状に有効です。いちど蓄膿症の手術後５０年に及ぶ頭痛というのを拝見したことがありますが、その時も口蓋骨の調整が有効でした。顎関節症のケアでは咬筋の緊張を緩めることに腐心することが多いのですが、側頭骨の動きが悪ければ緊張は再発しますし、上顎骨に問題があるときも咬筋へのアプローチだけでは奏功しません。

頭蓋骨を調整して腰痛が改善するというのも不思議な話ではあるのですが、時々経験します。クラニオセイクラルを習って間もないころ、ルーティンの脊椎、骨盤調整に全く反応してくれない急性腰痛患者さんを拝見したことがあります。レッドフラッグを疑って医療機関受診をお願いしたのですが画像上も異常なしでブロック注射を打ってもらったのだけれど全然改善しないとのことで再来院されました。苦し紛れ？に頭蓋骨を調整したところ、なんと腰痛が改善してくれたのです。頭蓋骨の緊張が硬膜を介して仙骨まで波及したための腰痛だったのか、自律神経の暴走が頭蓋骨調整で改善したものかは今となってはわかりませんが。逆に発作的に起きる頭痛を仙骨の調整で軽快させたこともあります。

自律神経の調整に関しては特に力を入れています。交通外傷後の頚部交感神経症候群やら不眠や不定愁訴などにももちろん有効ですが、子供さんの症状改善には侵襲性が低い手技ですので喜んでいただいています。発達や学習に問題がある子供さんは心身の緊張がきついです。たいていの場合三題噺のようにチック症と夜尿症とを合併していることが多いです。（吃音があるケースも２例だけですけれど拝見しています）クラニオセイクラルは交感神経優位の心身を副交感神経優位にもっていくことが可能ですのでこれらの症状のどれが主訴であっても、残りの二つも同時に改善していくことが多いです。緊張が緩むと面白いもので学校の成績も上がります。もともと学習塾や予備校で講師をしていましたのでそういうところも興味深く拝見しています。

自律神経の問題といえば不登校やらコロナ後遺症やらもあるのですが、こちらについてもぼつぼつ改善のための手立てが見え始めてきています。

今回はクラニオセイクラルがどんなに楽しい療法であるかを体験して、基礎的な施術を行うことができるようなセミナーを計画してみました。「これは面白い」と感じていただければ、手の感覚を深めていくコースや応用コースを受講していただくことも可能です。もちろん本セミナーだけで深いリラクゼーションを感じていただくことが可能です。

内容：次のような手技を紹介していきます。内容はセミナー進行状況によって変更になることがあります。
１．頭蓋仙骨系の概説 ２．適応と禁忌 ３．第4脳室圧縮（CV４）4．環椎・後頭底リリース 5．前頭骨リフト 6．頭頂骨リフト 7．篩骨リリース ８．頬骨リフト 9．蝶形骨の加圧と減圧 １0．側頭骨テンポラルロッキング 11．側頭骨イヤープル 12．顎関節13．ダイアフラムリリース（胸郭出口・横隔膜・骨盤底筋）14．腰仙部の解放


講師は柔道整復師です。学習塾講師、予備校講師を経て資格を取り大阪市内に「かなや整骨院」を開業。１９９７年頃からクラニオセイクラルを臨床で使い始めました。自院だけではなく広島市内の心療内科にも定期的にクラニオの施術に伺っています。